「試合の途中で『あっ』と思った」
【写真:Getty Images】
「ロングボールが増えたなかで、僕たちとしても勝負しやすくなった、というのはありますね。特に後半のああいった時間帯になると、ラインを下げてコンパクトに守る形が多くなると思いますけど、そこで5バックにしたことで、もう一度前からプレスに行こう、という意図も感じられた。だからこそ後ろも余裕を持って対応できていたし、特に前線の選手は前半から切り替えの速さでロングボールを蹴らせるところを押さえてくれていた。ゲームの締め方というところは、本当にポジティブにとらえたいと思います」
覚悟を決めて、勇気を振り絞ったプレーにベンチワークも加わったなかで、北朝鮮を零封して無傷の3連勝をマーク。9月に始まるアジア最終予選進出へ王手をかけた白星を板倉は素直に喜んだ。
「局面、局面の戦いがこの試合の大事なポイントになる、というのはわかっていたし、相手も死に物狂い日本を倒しに来る、というのもやる前からわかっていた。試合そのものは難しい展開になりましたけど、そのなかでしっかりと1対0で終われたところを前向きに受け止めていきたい」
無我夢中になってトラウマを乗り越えた過程で、板倉はある作業を忘れていた。58分から投入されたキャプテンの遠藤に対して、腕章を渡せないまま試合終了を迎えていたのだ。
試合後の取材エリアでその点を聞かれた板倉は「いや、そこは本当に申し訳ないというか……」と急に恐縮しながら、試合中における遠藤とのやり取りを明かしてくれた。
「試合の途中で『あっ』と思ったタイミングがあったんですけど、でもスローインとかコーナーキックのタイミングだったので、いまじゃないなと思いながら……タイミングがあれば渡したかったし、航くんにもそこは言われました。『お前、全然(キャプテンマークを)渡さねえじゃん』と」
最後は笑い話で締められた勝利を、森保監督も公式会見のなかで高く評価している。
「ひとつひとつ厳しい試合を経験して、確実に成長してくれていることを、結果を持って示してくれたのが今日の選手たちのプレーだと思っている。まだまだ改善できる部分はたくさんあるが、これからさらに厳しい戦いを経て彼らが成長していくところを監督として期待しているし、楽しみにしていきたい」
キックオフ直前に手渡されたキャプテンマークには、指揮官が寄せる板倉への変わらぬ信頼感と、前を向いてともに進んでいこう、という檄が込められていたのだろう。泥臭く、そして愚直にもぎ取った“ウノゼロ”の勝利の価値は、時間の経過とともに徐々に輪郭を帯びていくはずだ。
(取材・文:藤江直人)
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