MF陣が解釈した指揮官の意図「僕たちのクオリティーであれば…」
「1人少ない状況で、物理的にも相手にボールを握られる時間というものが増えるなかでも、僕たちのクオリティーであればひと刺しは十分に可能、というところは頭のなかにありました」
ひと刺しとは、イコール、ゴールに他ならない。ならば、どのようにして相手ゴールへ迫るのか。指揮官からは攻撃に関する具体的な指示はなかった、という。それでも中盤の3人が「左右にスライドを繰り返してほしい」と言われた瞬間に、山根は[4-3-2]システムに込められた意図を理解した。
「中盤の僕たちがスライドを頑張れば、強さやスピードのある前線が攻撃の厚みに繋がる。特に僕は途中から入ったので、みんなよりさらに多くの仕事をしなきゃいけないと思っていたし、0対0の展開のままでズルズルと10人で戦っていくのは、けっこうきついと考えていたので」
左右へスライドしながら球際の攻防やセカンドボールの回収で優位に立ち、プレスだけでなくプレスバックも愚直に繰り返す。数的不利の状況を補うために選手個々の運動量もそれまでより増やしながら、乾坤一擲のチャンスを待った。迎えた75分。山根の脳裏にひらめくものがあった。