躍進する町田ゼルビアで輝く「個」
黒田監督もJ2を制した昨シーズンで、平河をチーム4位の35試合、同3位のプレー時間2816分にわたって重用してきた。もっとも、大きな信頼を置いているのは攻撃力だけではない。
鹿島戦では前半の途中から、平河を左サイドから右へ配置転換している。右サイドで先発したバスケスが22分に負傷し、FW藤本一輝との交代を余儀なくされた。しかし、右サイドから鹿島に攻め込まれたその後の展開が、守備力にも長けた平河を右に置いた理由だと試合後に説明している。
「途中出場の藤本がフワフワと試合に入ってしまい、ボールに対して甘くなったのが原因のひとつになっていたので、それを阻止するために平河の守備力を右サイドに持っていきました」
昨シーズンと比べて体重が2kg増の70kgになった。切れ味鋭いドリブルに力強さが加わっただけでなく、強度が上がったJ1で3試合連続先発フル出場を果たし、ガンバ戦では今シーズンのJ1で最多となるスプリント回数32をマークするなどスタミナも増した。それでも平河は気を引き締める。
「いまのところ壁というものは感じていませんが、クオリティーや頭を使った相手のプレーといった部分は、J2よりはるかにレベルが上がっている。そうしたギャップも、どんどん埋めていきたい」
初体験のJ1でも暫定2位タイに浮上するなど、旋風を巻き起こしつつある町田で、平河は「個」としてまばゆい輝きを放っている。背番号を昨シーズンの「27番」から「7番」に変えて臨む未知の戦いで、日の丸を背負う可能性を膨らませながら、町田の「翼」はさらに雄々しく羽ばたこうとしている。
(取材・文:藤江直人)
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