やり場のない怒り。「2度とないようにしてほしい」
しかも、北朝鮮とホーム&アウェイ方式で争われるアジア最終予選は、敵地・平壌で予定されていた2月24日の第1戦の開催地を巡って、前代未聞のドタバタ劇が繰り広げられた。
アジアサッカー連盟(AFC)は2月に入って、平壌ではなく第三国での開催を朝鮮民主主義人民共和国サッカー連盟(DPRKFA)へ提案。一転して未定となった第1戦の開催地が、サウジアラビアのジッダに正式に決まったのは3日前の21日。通常ではありえない展開になでしこも翻弄された。
千葉市内で調整を重ねていたなでしこは、ジッダに内定した段階で日本を飛び立った。選手たちのなかにはヨーロッパから帰国し、滞在わずか1日で離日したキャプテンの熊谷も含まれていた。清水梨紗ら4人は、流動的な状況下でロンドン待機を余儀なくされた。
現地時間16時キックオフの第1戦は、気温が30度を超える消耗戦と化したなかで0-0の引き分けに終わった。北朝鮮の選手たちは事前に、温暖な気候の中国南部で25日間もの合宿を行い、十分な暑熱対策を積んでいた。なでしこの選手たちが、やり場のない怒りを抱えても無理はない。
チームは第1戦後もあえてジッダに宿泊。十分な休養を取り、さらに一夜明けた25日には現地で軽いトレーニングを行ってから26日に帰国した。第2戦を翌日に控えたミーティング。一連のドタバタ劇はあってはならないことと位置づけながら、山下は必ず勝とうと仲間たちに伝えている。
「いろいろなことがあったけど、それでも勝ってからじゃないと言えない部分も多いし、結果が伴っていない、という方向にとらえられてしまうのが一番嫌だし、そうなるのは悔しいと自分の意見として伝えました。もちろん、こういうことが二度と起こらないようにしてほしいと思っています」
前日ミーティングは、実は爆笑とともに終了していた。明るい性格でチームのムードメーカー役を担うDF高橋はなが、おもむろに立ち上がった。