なぜアーセナルは失点を喫したのか
ミケル・アルテタ監督も最大限にリスクを犯さないような采配を行っていた。
それは選手交代の切り方からも想像できる。コンセイソン監督が4選手を途中投入した一方で、アルテタ監督はレアンドロ・トロサールを下げてジョルジーニョを投入する一度しかカードを切っていない。
ベンチにはFWエディ・エンケティアやMFエミール・スミス=ロウ、FWリース・ネルソンらが控えていたが、攻撃的な選手を投入することはなかった。この試合だけで勝負を決する必要があるのであれば、FWガブリエウ・ジェズスの負傷に伴い、現スカッドで唯一のストライカーであるエンケティアをピッチに入れるプランもあったはずだ。
彼を起用しなかったのは無理にカウンターを狙わないためだろう。スピードがあり、カウンターを得意とするエンケティアを途中投入した場合は、ピッチ上の選手たちが彼を活かそうと攻め急ぐ可能性が高まる。しかし、攻め急ぐとプレーが雑になってパスが引っかかり、ポルトの狙いであるショートカウンターを受けやすくなってしまう。そのため、指揮官はあえて交代カードを最低限のものにして、現状のメンバーで最も高い守備強度を維持できる人選を選んだ。
これだけリスクを犯さなかったのにも関わらず失点を喫した。スコアが動いた90+3分は、試合終了間際だったこともあり、両チームにボールの主導権が行ったり来たりする怒涛の展開となっていた。
この流れにアーセナルは乗ってしまい、ゴールを決めたいという欲が出てしまった。その結果、ショートカウンターを受けることだけは避けたい展開で攻め急いでしまい、ガブリエウ・マルティネッリが出した裏への一本のパスをポルトDFオターヴィオがカット。そのボールがダイレクトで左WGのガレーノに渡ると、カウンターモードで前掛かりになっていたアーセナルの守備陣形が整う前にカットインシュートを沈められた。
最後の最後で出た色気が仇となり、痛恨の失点、そして敗戦を喫してしまった。この試合に関してはゲームプランを実行できなかったが、アーセナルには幸いにも2ndレグが残されている。それまでの期間に冨安健洋をはじめとする多くの負傷者が戻ってくる可能性が高いこともポジティブに捉えたい。
今季ホームで絶好調のアーセナルが逆転するのか、先勝したポルトが堅守を武器に守り勝つのか。運命の2ndレグは現地時間3月12日に行われる。
(文:安洋一郎)