ハフェルツには「兆候」が欲しい。改善されたのは…
これが可能なのはマルティン・ウーデゴールやジョルジーニョ、オレクサンドル・ジンチェンコがパスの供給源になった時ぐらいである。もちろん高い技術を持った選手が揃っているのだから悪目立ちすることはないのだが、裏抜けの過程の改善はハフェルツの課題点の1つだった。ラインブレイクの成功率を上げるためには、出し手に見せる“パスを呼び込む動き(兆候)”がもっと欲しいのだ。
この試合ではその裏抜けが改善され、味方選手がハフェルツの動きに反応してパスを出しやすくなっていった印象だ。相手MFと最終ラインの選手たちの間のスペース、いわゆる「ライン間」でタイミングを伺い、そこから走りこむ。この動きをピッチに立った84分間で何度も見せていた。
これまでは無かった、このわずかな距離の「助走」は、味方選手に判断する時間を与えてパスを引き出しやすくなるとともに、ハフェルツ自身も裏抜けのタイミングを調整しやすくなるため、相手DFの背後を取る瞬間をトップスピードで迎えることができる。わずかな違いだが、例えるなら最終ライン上に立って0→70に加速して裏抜けの瞬間を迎えるのか、最終ラインの手前から0→30→100で最も速いタイミングでDFの背後を通り過ぎるのかでは、味方選手の対応に大きな違いが生まれるということだ。この変化は今後の決定機増加につながる大きな成長と言って良いだろう。
その一方で、ハフェルツには改善してほしい課題点もある。それがシュートコースの選択だ。この試合を含めて最近の試合では、ハフェルツのシュートコースの甘さが気になる。
ディフェンスラインの背後に抜け出し、相手GKと1対1になった場面はFWにとってかなり有利な状況だ。リバプール戦ではDFイブラヒマ・コナテの背後を取ってGKアリソン・ベッカーとの1対1の状況を作り出したが、アリソンのセーブに遭ってゴールネットを揺らせなかった(最終的にこぼれ球をブカヨ・サカが拾って得点を奪っている)。この時ハフェルツのシュートはアリソンの左胸あたりに当たっている。名手アリソンの好セーブと考えてもよいかもしれないが、ここにハフェルツの伸びしろがある。