クロスの質を上げるために必要な原則。日本代表に共通理解はあったのか?
理論として、クロスを上げる場所は大きく4つに分割することができます。そして、このゾーンからならこのエリアに上げるのが有効という原則が存在します。問題は共通理解が日本代表にあるかないかだと思います。
たとえば、コーナー付近ならニアに上げる。これは、カウンターを受けるリスクを考慮しなければならないからです。GKが出てキャッチされて、そのままカウンターを受ける可能性がある。ポケットに入ったらマイナスの折り返し、またはファーポスト、アーリー気味なら無理矢理クロスでなくてもポケットを狙うなどなど。
これは「100%こうしなさい」というものではなく、最終的にはケース・バイ・ケースで判断すればいい。さらに、クロスに入り込む方も、ニアポスト、ファーポスト、マイナスの三箇所はしっかりおさえる。なんとなく、フィーリングで狙っていてもゴールは生まれない。クロスを上げる場所と狙う位置を共通理解として持っておくと、クロスの“質”は上がります。
今回の分析はボールを中心に考えてサッカーをする「BoS(ベーオーエス)理論」が根幹になっています。基準があれば工夫ができる。相手の特徴やピッチで感じたことをふまえて判断を変えてもいい。ただ、レベルが上がれば上がるほど、細かいことの積み重ねが勝敗を決める。言葉にしたら小さな違いですが、ワールドカップで勝つためには大事なことばかりです。
(文:河岸貴)
【プロフィール】河岸貴
1976年7月25日生まれ、石川県出身。金沢大学卒業、同大学大学院修了。ドイツ・シュトゥットガルト在住。06年から指導者修行のためブンデスリーガの名門シュトゥットガルトの育成組織で研鑽を積み、09年から正式な指導者となり、11年1月から13年8月までトップチームに在籍。その後、スカウトと日本プロジェクトのコーディネーターを歴任し、サッカーコンサルティング会社「KIOT CONNECTIONS GbR」を設立。J SPORTSでブンデスリーガ解説、講義・講演活動、指導者講習会などを開催。21年から23年まで『フットボール批評』で「現代サッカーの教科書」を連載し、23年11月に著書「サッカー『BoS理論』 ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法」を上梓。ドイツサッカー協会B級指導者ライセンス、日本サッカー協会A級指導者ライセンスを保持。
【関連記事】英国人が見たイラン戦「あってはいけない」「久保建英はいつもより…」「バラバラ…。困ります」
あまりに弱い…。サッカー日本代表、イラン戦全選手パフォーマンス査定。敗戦の原因を招いたのは?【アジアカップ2023】
これが森保ジャパンの限界。サッカー日本代表はお先真っ暗。選手側からSOS、もはや職務怠慢の域に【アジアカップ2023】
【了】