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日本代表 10か月前

【サッカー日本代表批評3】なぜクロスの質が低いのか? 様式美の「幅を取る」に意味はない。必要なゲーゲンプレスの前提条件

シリーズ:サッカー日本代表批評 text by 河岸貴 photo by Getty Images

クロスの質を上げるために必要な原則。日本代表に共通理解はあったのか?

イラン代表に敗れたサッカー日本代表
【写真:田中伸弥】



 理論として、クロスを上げる場所は大きく4つに分割することができます。そして、このゾーンからならこのエリアに上げるのが有効という原則が存在します。問題は共通理解が日本代表にあるかないかだと思います。

 たとえば、コーナー付近ならニアに上げる。これは、カウンターを受けるリスクを考慮しなければならないからです。GKが出てキャッチされて、そのままカウンターを受ける可能性がある。ポケットに入ったらマイナスの折り返し、またはファーポスト、アーリー気味なら無理矢理クロスでなくてもポケットを狙うなどなど。

 これは「100%こうしなさい」というものではなく、最終的にはケース・バイ・ケースで判断すればいい。さらに、クロスに入り込む方も、ニアポスト、ファーポスト、マイナスの三箇所はしっかりおさえる。なんとなく、フィーリングで狙っていてもゴールは生まれない。クロスを上げる場所と狙う位置を共通理解として持っておくと、クロスの“質”は上がります。

 今回の分析はボールを中心に考えてサッカーをする「BoS(ベーオーエス)理論」が根幹になっています。基準があれば工夫ができる。相手の特徴やピッチで感じたことをふまえて判断を変えてもいい。ただ、レベルが上がれば上がるほど、細かいことの積み重ねが勝敗を決める。言葉にしたら小さな違いですが、ワールドカップで勝つためには大事なことばかりです。

(文:河岸貴)

【プロフィール】河岸貴

1976年7月25日生まれ、石川県出身。金沢大学卒業、同大学大学院修了。ドイツ・シュトゥットガルト在住。06年から指導者修行のためブンデスリーガの名門シュトゥットガルトの育成組織で研鑽を積み、09年から正式な指導者となり、11年1月から13年8月までトップチームに在籍。その後、スカウトと日本プロジェクトのコーディネーターを歴任し、サッカーコンサルティング会社「KIOT CONNECTIONS GbR」を設立。J SPORTSでブンデスリーガ解説、講義・講演活動、指導者講習会などを開催。21年から23年まで『フットボール批評』で「現代サッカーの教科書」を連載し、23年11月に著書「サッカー『BoS理論』 ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法」を上梓。ドイツサッカー協会B級指導者ライセンス、日本サッカー協会A級指導者ライセンスを保持。

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【了】

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