「幅を取る」ことのデメリット
広がれば広がるほど選手間にスペースが生まれ、当然長いパスが必要となり、パスカットを狙われやすい。さらにボールを失ったときにカウンターを受けやすくなる。ゲーゲンプレスの前提条件は、ボールに対してコンパクトな陣形を保つことです。開いていてがゆえに、パスをカットされてカウンターを受けたシーンをイラク代表戦では何度も見ました。
ゲーゲンプレスという発想がなく、攻撃と守備を完全に分けて考えると、盲目的に「幅を取れ」という発想が生まれる。確かに落ち着いたボール保持はできるかもしれませんが、相手ゴールに近づくほど、私が両サイドの幅を取ることを嫌う理由の1つは、ゴールから遠くなるからです。
イラク代表は10人で守っていました。幅を取ったところからライン際を突破しても、ポケットに侵入しても、時間があるから対応しやすい。こちらもただ単にポケットに侵入しても必ずしもゴールにつながるわけではない。ゴールチャンスを創出するにタイミングとパスの質。DFが虚をつかれたように一気に背走して瞬時に対応しなくてはならないようなタイミングでボールを入れ、そしてボールの受け手がなるべくゴールに背を向けることないパスです。
イラク代表戦はクロスの精度も、攻めあぐねた原因の1つでしょう。ただ、これも選手のクオリティという抽象的な言葉で片づけるのではなく、具体的に何が良くなかったのかを指摘しなければなりません。