イラン代表戦。なぜ耐えきれなかったのか…「事故が起きる確率を減らすためにできることはあった」
イラン代表は3日前のラウンド16で延長戦も含めた120分プレーし、PK戦までもつれ込む激戦を消化していました。日本代表と同じ中2日という条件でしたが、明らかにインテンシティは高くなかった。中には前半から体力切れでポジションに戻れていないような選手もいました。
前から行きたい中盤と前線と、なかなかプッシュアップできない最終ラインというのが前半のイラン代表側の問題でした。だからこそ久保建英は自由にボールを受けられたし、上田綺世もボールを収めていた。先制ゴール自体は相手GKのミスという要素もありましたが、守田英正の得点で1点を取って前半を終えた。ここまでの展開は日本代表としては悪くなかったはずです。
日本代表の最終ラインにラフなボールに弱いメンバーが並んでいたわけではありません。それでも苦戦したのは、前回述べたように簡単にロングボールを蹴らせてしまっていたからでしょう。また、イラク代表戦と同じようにダイアゴナルにボールを蹴られ、そこに人数を集められた。やられ方としては同じですね。
ダイアゴナル含めて、大きく逆サイドに振られて直接、または起点となって失点する形は、流れのなかからだけではなく、CK、FKを含めるとベトナム代表の初戦から数えると毎試合あります。イラン代表は当然そこを日本対策として考えていたでしょう。毎熊晟矢の背後でフリーを作られてクロスから危ないシーンがありました。
イラン代表戦では後半アディショナルタイムにPKを献上して、それが決勝点となりました。板倉と冨安の間にボールが落ち、板倉が相手を倒してしまいました。事故とは言いますが、ああいうミスはチームが浮ついていると起きる、必然の事故とも言えます。
非常にシンプルかつ当然ですが、毎熊の背後も含めて、どう対処すべきかをしっかりコミュニケーションをとることが必要でした。お互いが声かけ合いオーガナイズする。PA内をソリッドに守るための初歩中の初歩です。この試合の後半、解説者がもっと声を出すべきとコメントしていたように、映像からもゲーム中の混乱ぶりは見て取れた。ただし、この一因はベンチワークにあることは否定できない。さらに、個人的にはGKの不安定さも5試合8失点のDF陣に少なからず影響したと考えます。
ここまではボール非保持の局面における問題点を具体的に挙げてきましたが、次回はボール保持の局面に焦点を当てていきます。
(文:河岸貴)
【プロフィール】河岸貴
1976年7月25日生まれ、石川県出身。金沢大学卒業、同大学大学院修了。ドイツ・シュトゥットガルト在住。06年から指導者修行のためブンデスリーガの名門シュトゥットガルトの育成組織で研鑽を積み、09年から正式な指導者となり、11年1月から13年8月までトップチームに在籍。その後、スカウトと日本プロジェクトのコーディネーターを歴任し、サッカーコンサルティング会社「KIOT CONNECTIONS GbR」を設立。J SPORTSでブンデスリーガ解説、講義・講演活動、指導者講習会などを開催。21年から23年まで『フットボール批評』で「現代サッカーの教科書」を連載し、23年11月に著書「サッカー『BoS理論』 ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法」を上梓。ドイツサッカー協会B級指導者ライセンス、日本サッカー協会A級指導者ライセンスを保持。
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