なぜ中東勢のロングボールに苦しむのか
日本代表はロングボールに苦しみました。ロングボールについては、拙著「サッカー『BoS理論』 ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法」でも記しているので、それを読んでいただくのがいいかと思います。蹴られる前、後に関して詳細に示しています。どちらも同時に重要なことですが、今回は「蹴られる前」にフォーカスしたいと思います。
日本代表はイラク代表戦の前までに10連勝していました。コンパクトな陣形でボールを奪ったら素早くゴールに迫る形が、最近の日本代表はできていました。相手がボールを保持して攻め込んでくるシチュエーションであれば、自然と日本代表はコンパクトになる。ただ、イラク代表がロングボールを多用してきたことにより、日本代表のコンパクトさは失われています。
まず、問題点として挙げられるのは、ロングボールを簡単に蹴られたことです。ロングボールは選手の頭上を越えていくので、誰にも干渉されずに目的地へ届けることができる。距離が長いのでキックやトラップで技術的なミスが起きる可能性はありますが、原理として目的を持ったロングボールはゴールを奪うためには非常に効果的です。
だから、相手陣にボールがある場合、前線の選手はロングボールを簡単に蹴らせてはいけない。縦、深さのコントロールをする。前線の選手は蹴らせないためにはボールホルダーの前に立つ必要がある。ファーストディフェンダーは寄せきれなくても問題ありません。前に立つと、ボールホルダーはロングボールを蹴ることをためらい、身体を横に向けて近くの相手にパスを出します。この瞬間にワンサイドカットしてコースを限定し、味方と連動して奪いに行きます。
ファーストディフェンダーがただ単にワンサイドカットしても縦に蹴られる、または前方に運ばれるだけです。曖昧なプレスをかけると目的のあるロングボールを蹴られる。すると、全体が間延びしてセカンドボールを回収できなくなる。
ボールにアタックできていれば、失点につながるような大きな問題が起きる可能性は少なくなる。ディフェンスラインがずるずる下がってしまうのは、前線の選手が相手ボールにプレッシャーをかけられず、ボールを自由にさせてしまうから。イラン代表戦では後半の早い時間にオフサイドになったシーンがありましたが、あれからディフェンスラインは下がっていきました。
次回は、ここまで説明したロングボールへの対応の原則をもとに、具体的なシーンを挙げて問題点を明らかにしていきたいと思います。
(文:河岸貴)
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