キャプテンとしての役割
遠藤選手が素晴らしい選手であることは間違いありませんし、彼なしに現在の日本代表は考えられない。シュトゥットガルト時代から今のリバプールでの活躍も知っている。ただ、イラン代表戦での振る舞いはどうだったのでしょうか。黙々と自分自身のタスクをこなすのが彼のスタイルですが、やはりああいうときにキャプテンとして他のチームメイトをも鼓舞しないといけないと個人的には強く思います。ただ、そのタイプの選手をキャプテンに据えたのは監督です。
一方で冨安健洋選手は何かしようとしているように見えました。でも表情は虚ろで、何かしたいけどどうしたらいいか分からなかったのかもしれません。ハンブルガーSV時代にキャプテンを務めた高徳高徳選手も「ハンブルクのときは自分もそうでした」と言っていましたが、まさにそんな心境だったのかもしれません。
アジア杯での代表チームという枠組みで見たときに、日本代表のチームの良さは個々の選手のクオリティもさることながら、高い親和性・協調性も挙げられるでしょう。ただ、前回指摘したように、イラン代表戦のような劣勢の状態でリーダーシップを取れるような人が現時点ではいないということもわかりました。果たして、これらは選手たちだけの問題でしょうか? 冒頭で触れた選手たちが茫然自失してしまった要因には組織としての脆弱さにある。能力の高い集団を組織としてパフォーマンスを最大限に発揮できるマネージメントであったか、チームとしての戦術的な軸があるのかなど、コーチングサイドにも大きな疑問が残る。
心理的・組織的な部分がフットボールには大きく影響することを忘れてはいけません。ただ、これらはあくまで画面から見えてきたことと、選手たちの言葉などから推測したものであり、あくまで分析の一部分にすぎません。ここからは、ピッチ上に起きていたタクティカルな部分に焦点を当てたいと思います。
イラン代表との一戦を振り返る前に、日本代表が敗れたグループステージ第2節のイラク代表戦に触れる必要があります。