実際に分析班は何をしているのか?
「公式戦の前には対戦相手の映像を見ながら、分析班のみんなで『ここが弱点だ』とか話し合っていました。試合会場へ映像を撮影しに行って、それをSPLYZA Teamsのサイトにアップして、そこからいろいろな情報を得ている形です。SPLYZA Teamsにしても最初のころは戸惑いましたけど、2年生、3年生になるにつれて使い方もわかってきましたし、次の対戦相手の分析だけじゃなくて、終わった試合の振り返りでもその映像を使っています。今回の選手権もすべて中1日の短期決戦で、準備期間も少なかったなかで、分析班がいろいろとしてくれたことが、決勝まで勝ち上がれた要因じゃないかなと思っています」
青森山田の十八番を封じ込めた試合はしかし、1-3のスコアで敗れた。小山に代えて投入したMF山本諒が味方との鮮やかな連携から、後半開始直後の47分に同点ゴールを決めるも、ギアをさらに上げた青森山田に60分、70分とゴールネットを揺らされ、必死の反撃もはね返され続けた。
戦いの終わりを告げる主審の笛が鳴り響いた直後。前田監督は大出キーパーコーチに声をかけた。
「大出、ありがとう。セットプレー(からの失点)はゼロやったわ」
近江にとっては2大会連続3度目の全国高校サッカー選手権だった。過去2大会はともに初戦敗退。それが一転して、初戦の2回戦からインターハイ4強の日大藤沢(神奈川)、同優勝の明秀日立(茨城)、タレント軍団の神村学園(鹿児島)、地元の堀越(東京A)を立て続けに撃破した。
決勝こそ青森山田に屈して悔し涙を流したが、それでも近江が刻んだ軌跡は色褪せない。全国の高校サッカーファンを魅了した快進撃に、20人ほどが所属する分析班があげてきた対戦相手の情報はどのくらい寄与していたのか。前田監督に直撃すると予想に反する、意外な言葉が返ってきた。