引き継ぎ下手だったアレックス・ファーガソン
わかりやすい問題としては攻撃面だ。2011年の春にペップ・グアルディオラ率いるバルセロナにチャンピオンズリーグ決勝で1-3の完敗したユナイテッドは、その後の残り2年のファーガソン在任期間中、バルサ的ポゼッションなサッカーへの転換を試みた。
しかしその試みは非常に中途半端に終わったと言わざるを得ない。
まずビルドアップ面では中途半端にバルセロナを模倣して終わった。補強面でも、ラストイヤーに日本代表MF香川真司を獲得することでよりポゼッションへの転換を目指すかと思われたが、最終的に夏の移籍市場終了間際にオランダ代表FWロビン・ファン・ペルシーを獲得し、彼の得点能力に頼ったダイレクトなフットボールに帰着した。しかもこのストライカーがケガがちで、継続的な活躍が望めないこともあり、後任者たちは彼を絶対的なスタメンとして据えることはできず。目の前の試合で勝つための超短期的な強化だったと言える。
また中盤には、当時23歳のトム・クレバリーや、20歳のジェシー・リンガードなどが在籍し、最終ラインには23歳クリス・スモーリング、22歳ラファエル&ファビオ兄弟、21歳フィル・ジョーンズなど若手はいるにはいた。ただし重要な試合では30代を超えるリオ・ファーデナンド、ネマニャ・ヴィディッチ、パトリス・エブラ、マイケル・キャリック、ライアン・ギグスなどのベテラン陣にまだまだ依存していた。
それどころか中盤の枚数を不十分として、2012年冬には一度引退した37歳のポール・スコールズを呼び戻し、残り1年半稼働させて中盤をなんとか成立させていたほどだ。
振り返るとラストイヤーは、ファーガソンの神通力で優勝を成し遂げたが、その後もリーグ王者をその後も目指せるスカッドではなかった。後継にも優しい補強をしていたのはGKくらいだろうか。
その後の失敗はもちろん多くの優秀なスタッフの退任や、デイビッド・モイーズの実力不足、そもそもオーナー問題など、様々な問題が一因としてあったのは明らかである。ただファーガソンもファーガソンで、引き継ぎ下手だったことも間違いない。
この事例と比べると、クロップの辞め方は非常に綺麗だと言える。