「何でこんなにうまくいかないんだろう」と吐き捨てた男の逆襲
加えて言うと、そろそろゴールという結果もほしいところ。バーレーン代表の指揮を執るフアン・アントニオ・ピッツィ監督は2019年の前回大会でサウジアラビア代表を率いていた。ラウンド16で日本代表と対峙し、ボール支配率72％と圧倒しながら、冨安のヘディング弾に沈んでいる。その苦い出来事を忘れているはずがない。ピッツィ監督が冨安を誰よりも警戒してくるのは間違いない。
「あの試合は本当にサウジの方がゲームを支配していましたし、ずっと守る展開だったんで、今回もそういう展開になりうるというか。ならないのがベストですけど、だからこそ、セットプレーがカギになってくる。僕であれ、誰であれ、ヒーローになる選手が必要になってくる。それが僕であれば、よりいいこと。ただ、まずクリーンシートですね。僕にとってはそっちの方がプライオリティは高いんで」
冨安本人は5年前の激闘を脳裏に刻みつつ、ピッツィ監督を返り討ちにする構えだ。冨安がここで代表2ゴール目をマークし、最高の雰囲気でバーレーン代表に勝ち切ることができれば、まさに理想的。チーム全体に弾みもつくはずだ。
そして、ここからの11日間で行われる4試合で背番号22がフル稼働してくれれば、日本は5度目の戴冠に大きく近づく。万全の状態で出場できなかったFIFAワールドカップカタール2022で「何でこんなにうまくいかないんだろう」と吐き捨てた男は、その後も度重なるケガなどさまざまな挫折に直面したが、頼もしい存在になってここまで辿り着いた。
1年前と同じカタールの地で異次元の存在感を発揮し、日本代表をアジア制覇へと導くことができれば、彼自身も一回りも二回りもスケールアップできる。今後のキャリアをより輝かせるためにも、アジアカップは是が非でも手にしたいタイトルだ。2004年大会優勝メンバーの中澤佑二、2011年大会優勝メンバーの吉田麻也という22番の先人たちを超えるべく、彼には世界最高峰のパフォーマンスをピッチで示してほしい。
（取材・文：元川悦子【カタール】）
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