森保一監督はダブルスタンダードなのか
「ベトナム戦で課題が出た中で替えるのではなくて、ベトナム戦の課題を修正するために、もう1回(同じ)選手たちにプレーしてもらうことも大切だと思う」
つまり、初戦で出た課題を解消するために、第2戦はほぼ同じメンバーで臨んだ。しかし、そこで課題は解決されずに敗れたことで、第3戦では大きくメンバーを替えた。一見してダブルスタンダードのような采配にも見えるが、優勝から逆算するという点で見れば合点がいく。
森保監督はインドネシア代表戦後、「負けたからではなく、過去の試合の成果と課題を振り返って、次の試合に活かすことをチームでできたことが選手のパフォーマンスにつながったと思う。敗戦は痛かったですけど、話し合ういい機会になって、インドネシア代表戦に向けていいエネルギー作りになった」と話す。イラク代表戦の敗戦がなければ、インドネシア代表戦の前日会見で冨安が「叩きのめすつもりで」と言うこともなかったかもしれない。
あくまで推測の域を出ないが、グループステージのどこかで苦戦する試合があるだろうと指揮官が想定していたかもしれない。実力的に、下馬評で見れば日本代表の優勝を予想するのは難しくないが、こういった舞台で優勝候補がそのまま優勝するケースは決して多くない。
苦戦をきっかけにチームが一度気を引き締めていければ、決勝トーナメントに向けて状態は上がっていく。ただ、決勝トーナメントでそれが起きてしまえば、その時点で大会を去らなければならない。苦い教訓が許されるのはグループステージまで。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」である。
最後に述べたのはあくまで結果論だが、現場責任者はあらゆる場面を想定しながら決断を下さなければならない。前述したイラク代表戦2日後のミーティングを森保監督は「いいタイミングだった」と話す。アジア制覇という結果をもたらすことができれば、イラク代表戦の敗戦が無駄ではなかったと言えるかもしれない。
(取材・文:加藤健一【カタール】)
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