ミスキャストと南野拓実の問題
細谷はスピードが武器で裏抜けを特徴とするストライカーだが、そもそもこの試合で相手ディフェンスの裏のスペースは限られている。伊東純也、中村敬斗、南野の2列目が「間受け」を狙うのでバイタルエリアは渋滞、細谷がそこで収める形にはならない。細谷へのラストパスも限定的。カウンターからのチャンスはあったが、それ以外は存在感が薄く、この試合に関してはミスキャストだった。
2得点の大活躍、素早い守備でも躍動した南野も、「間受け」という点ではあまり仕事をしていない。前回大会でもセカンドストライカーとして活躍したが、引いた相手を崩すためのポイントになる「間受け」はできておらず、その点はトップの大迫勇也が肩代わりしていた。ASモナコ移籍後、バイタルエリアからのラストパスに新境地を拓いたはずだが、この試合ではアシストについては不発だった。
19歳のグエン・ディン・バックは数少ない脅威になっていた。技術が高く、足腰の強さもあり、遠藤航を股抜きでかわす太々しさもあった。自らの攻め込みで得たCKから、ニアで見事に合わせるヘディングで16分に同点ゴール。さらに菅原由勢のファウルを誘ってFKをとり、ベトナム代表はそこから逆転の2点目をゲット。持ち前の機敏さ、ボールタッチの上手さを発揮し、さらにトルシエ監督仕込みの機動力のある守備でベトナム代表はペースをつかみかけていた。
ところが、日本代表は南野、中村のゴールであっさりと逆転に成功。そこまで攻め込みが上手くいっているわけでもないのに、チャンスを効率的に決めてしまう決定力の高さは現在のチームの最大の長所なのかもしれない。かつては「決定力不足」と言われ続け、ブラジル代表などに理不尽なシュートを食らって彼我の差を痛感させられていたものだが、日本代表はいつのまにかそれを対戦相手に行使するチームになっているのだ。