7位:イラク代表
【写真:Getty Images】
監督:ヘスス・カサス
FIFAランキング:63位
戦力値平均:6.7(攻撃力7、守備力6、采配7)
AFCアジアカップ2023で日本代表と同組のグループDに属するイラク代表は着実に力をつけている。その原動力となっているのが、2022年11月から監督を務めるヘスス・カサスの存在だ。同氏は長くバルセロナでアナリストを務めた経験から分析力が高いことで知られ、これが評価されてルイス・エンリケがスペイン代表監督に就任した際にはアシスタントコーチとして招かれた実績がある。
このスペイン人指揮官のもとでイラク代表は、昨年1月に開催された中東8ヶ国で行われるガルフカップを制覇。2022年のカタールワールドカップにも出場したサウジアラビアやカタールなどの強豪国を倒しての優勝であり、新体制では14試合で9勝1分4敗と高い勝率を誇っている。
躍進に繋がっているのが「7」と高評価の「攻撃力」だ。昨年1年間で6ゴールを決めたエースのアイマン・フサイン(アル・クウワ・アル・ジャウウィーヤ)やフットボールリーグ2(イングランド4部相当)で得点王争いを演じている21歳の若武者アリ・アル=ハマディ(AFCウィンブルドン)を筆頭に、ゴール前で仕事ができるストライカーのクオリティが高い。
彼らに加えて、昨年10月にイラク代表入りを決断したスウェーデン生まれのダニーロ・アル・サイード(サンデフィヨルド)の存在は大きいものになりそうだ。左WGが本職の同選手は、2023シーズンにエリテセリエン(ノルウェー1部)で11得点2アシストという好成績を残している。WGの火力に課題を残していたポジションに現れた“新戦力“のおかげで、さらに強力な攻撃陣を形成することに成功した。
一方で「攻撃力」より低い「6」となった「守備力」にはわずかな懸念がある。PKストップも得意な主将のGKジャラル・ハッサン(アル・ザウラー)は非常に安定しているが、CBには一抹の不安があり、本職左SBのアリ・アドナン(メス・ラフサンジャーン)とレビン・スラカ(ブロマポイカルナ)のコンビは昨年10月に組み始めたばかり。現体制となってからの1試合最多失点は2と守備が弱点のチームではないが、バックラインの完成度には多少の不安が残る。
代表チームを成長させているカサス監督の采配は「7」と、こちらも評価が高い。基本戦術は[4-2-3-1]だが、この形にこだわることなく、早い時間帯から先手の交代策を打ってくるのが特徴だ。1点が欲しい場面ではストライカー2人を投入する2トップ、リード時はCBを1枚追加して迷わず5バックにするなど臨機応変なアイデアを持っている。昨年のガルフカップは彼の采配が優勝に直結するほど効果的だった。
現体制で3得点3アシストと多くのゴールに絡んでいた中盤のキーマンであるアムジャド・アトワン(ザーホー)の欠場は大きな痛手だが、現体制で先制した試合での勝率はPK戦も含めると100%とチームとして勝ち方を知っている。グループD第2節で対戦する日本代表も侮れない相手になるだろう。