「体が大きくない分だけ…」佐野海舟のボールを奪う極意
「相手との駆け引きなどでボールを奪うプレーが、自分は得意だと思っています。体が大きくない分だけ、そういうところで勝負しなきゃいけないと思ってきました」
さらにセカンドボールの落下点やボールの行方に対する予測など、独自のアンテナをピッチ上でフル稼働させる。築き上げてきたスタイルに照らし合わせても、タイ戦の前半は納得できなかった。
「予測という部分に関しても、自分のいいときと比べて今日は上手く出せなかったと思っている。攻守のバランスを取りながら、もっともっと予測の部分も働かせていかなきゃいけない」
予測力を研ぎ澄まさせていくためには、試合中における情報収集力をさらに高めていく必要がある。課題を解消させるための金言を、佐野は昨年末に始まった代表合宿中に授かっている。
「ピッチ上でこまめに首を振る、情報を得るという作業を、僕は息を吸うようにやっていた」
声の主は臨時コーチとして招かれた、日本サッカー協会の中村憲剛ロールモデルコーチ。川崎フロンターレのボランチやトップ下で一時代を築いたレジェンドの言葉に、佐野は大きな感銘を受けた。
「ボランチとして本当に必要な動きだと思ったし、自分自身、そこはあまりできていなかった。まずは意識しながら取り組んで、自分の武器として、無意識のうちにきるようにしていけたら」
意識せずとも、まるで息を吸うように首を振り続ける。その間は足もとのボールにほとんど視線を落とさず、次のプレーを決める必要な情報をリアルタイムで脳裏にインプットしていく。いま現在の森保ジャパンでそれを実践している代表格が、レアル・ソシエダをけん引する久保建英となるだろう。
先発フル出場したタイ戦で、新たな武器を稼働させられたのか。佐野は首を横に振った。
「いや、まだまだです。まだまだこれからだし、意識してやり続けていかなきゃダメですね。もっともっと情報量を増やして、ボランチとして自分にできるプレーを増やしていきたい」
総勢で7人を数えた、国際Aマッチ出場数が「1」以下だったフィールドプレイヤー全員がタイ戦で起用された。それぞれがキャップ数を増やしたなかで、アジアカップ代表に選出されたのは佐野だけだった。森保監督の期待のもと、次のステージへ駆け上がった佐野は代表発表前にこう語っていた。
「絶対に選ばれたいし、徐々にですけど自信もついてきているので、もっともっと自分のプレーを出していきたい。例え選ばれなくても自分のやるべきことをぶらさずに、これからも続けていきたい」
12日に開幕するアジアカップで最後まで勝ち残れば最大で7試合を戦い、帰国は決勝戦翌日の2月11日となる。常勝軍団復活を期し、ランコ・ポポヴィッチ新監督のもとで始動している鹿島へ、さらにスケールを増して合流する自らの姿を思い描きながら、佐野は中東カタールの地で新たな戦いに臨む。
(取材・文:藤江直人)
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