三笘薫が攻撃の起点となれなかった理由
三笘の周りを使うプレーが効果を発揮しなかったのは、シンプルに離脱者の影響がかなり大きいと言える。その中でも影響が特に大きいのが右WGのソリー・マーチと左SBのペルビス・エストゥピニャンの不在だ。
マーチは逆サイドの三笘からのクロスを呼び込むように動き出して合わせるなど、相手ディフェンスの背後を取るオフザボールが上手い。前回の「M23ダービー」の決勝点は三笘のパスに抜け出した同選手が相手GKとの1対1を制してネットを揺らした形だった。
しかし、今節右WGを務めたシモン・アディングラは逆サイドからパスを呼び込む動き出しが少なく、三笘と同じく勤続疲労の影響で、そもそものコンディションが悪そうだった。
そしてマーチ以上に不在の影響が大きいのがエストゥピニャンで、彼は三笘の動きに合わせて内と外を走り分けてくれるチーム唯一の本職左SBの選手だ。
彼のような選手が近くにいれば、三笘が相手を引きつけた際にフリーになるため、より効果が発揮されるのだが、この試合において左SBで起用されたのは本職CBのイゴールだった。彼には日本代表FWのサポートをするタスクは与えられていない。
クリスタル・パレスのようなしっかりとブロックを組むチームを崩すためには、何かしらの一工夫が必要なのだが、三笘を起点とした攻撃では相手を脅かすほどの脅威を与えることができなかった。その結果が最低評価に繋がったと考えられる。そして後半からはチームとして顕著に多くの人数を掛けた右サイドを起点に攻撃を作るようになったことからも、前半に左サイドを経由した攻撃の可能性が低かったことを裏付けている。
そしてマーチ、エストゥピニャンに続いて三笘もこの試合で負傷してしまった。アンス・ファティも同じように負傷離脱していることから、残りの本職WGはアディングラしかおらず、彼も年明けになればアフリカ・ネーションズカップで離脱をする。
ブライトンにとって厳しい冬となりそうだ。
(文:安洋一郎)