三笘薫がほとんどチャンスに絡めなかった理由
三笘にフォーカスをすると、彼にとっても厳しい試合となった。
アーセナルはサカがいる右サイドを起点に多くの攻撃を仕掛けたため、必然的に日本代表FWの守備をする時間が増えた。
仮にブライトンの左SBがペルビス・エストゥピニャンであればもう少し負担が減ったかもしれないが、同選手の怪我による離脱に伴い、この試合は大ベテランのジェームズ・ミルナーが起用されていた。サカとのマッチアップで不利だったのは見れば明らかだった。
また、右のインサイドハーフを務めるウーデゴールも絶好調だったことも相まって三笘の守備負担は大きくなり、前半からボックス内に戻ってディフェンス対応をするなど、かなりの距離を走らされていた。
この守備負担の大きさが前提にあったことで、三笘はほとんどチャンスに絡むことができなかった。その中で訪れた唯一のチャンスが、パスカル・グロスにアウトサイドパスを出した82分の場面だ。
このシーンでブライトンはチームとして日本代表FWに前を向かせた状況で配球することができている。強かった時期のブライトンは、三笘に高い位置でボールが入ってからのチャンスメイクが多かった。それを可能にしていたのが先述したマック・アリスターとカイセドの両名なのだが、彼らが抜けたことで三笘が前向きでボールを受ける機会がめっきり減ってしまっている。
57分に三笘が自慢のスピードで長い距離を運んだ場面があったが、これは低い位置からのプレーだった。ハーフラインより手前からのドリブルは、相手チームからすればそこまで脅威ではない。
ブライトンからすれば82分の場面のように、チームとして三笘に前向きでボールを預けることが重要であり、逆にそこまでの道筋を絶たれてしまうと厳しい戦いを余儀なくされる。アーセナルはブライトンが起点にしたいプレーをことごとく封じていたため、三笘に良い形でボールが渡ることはほとんどなかった。
そしてソリー・マーチら負傷者が続出しているブライトンでは、三笘が封じられてしまうとチャンスを作ることが難しい。アーセナル相手にほとんどチャンスを作ることができなかったのは、今の戦力と戦い方からすれば必然だったのかもしれない。
(文:安洋一郎)