遠藤航がリバプールのビルドアップに向いていない理由
今に始まったことではないが、リバプールのビルドアップはかなり個人技に依存をしている。
選手の立ち位置やルールが決まっているわけではないため、その場面に応じたアドリブが求められている。特に中盤は360度の視野が求められるポジションであり、瞬間的な状況判断が欠かせない。
この状況判断を助けるのが、プレーの選択肢の多さだ。クロップ監督の中での序列が高いアレクシス・マック・アリスターやドミニク・ソボスライ、ライアン・フラーフェンベルフは、ボールを受けた時の選択肢がパスやキープ、ドリブルでの持ち運びなど、いくつか武器がある。そのため立ち位置が整理されていないリバプールの中盤でもなんとかビルドアップできている。
一方の遠藤は彼らと比較をするとボールを持った際の選択肢が少なく、先述したボールロストの仕方からもわかるように、基本的にはパスしか彼の中でのプレー選択はない。仮にビルドアップが整理されているチームであれば、味方選手の決まったサポートの仕方などがルールとして浸透しているが、リバプールの場合はこれがない。
立ち位置が整理されていないことから場面ごとに味方選手の立ち位置が異なる。そのため遠藤は彼らのポジションを把握するために顔を上げてチームメイトを探す必要が生まれ、現状では、その数秒間の間に相手に距離を詰められている。
この「パスコースを塞ぎながらプレスを仕掛ける」という対策に対する遠藤の策は、相手と味方の立ち位置を常に確認して判断能力を高め、そこへのダイレクトやワンタッチパスで捌くしかないだろう。これができるようになれば、チームメイトが遠藤にプレスを仕掛けた選手が空けたスペースを上手く活用することができるかもしれない。
週末のマンチェスター・ユナイテッド戦はマック・アリスターが戦列に戻れるかどうかわからないため、遠藤に再び先発出場のチャンスが訪れる可能性がある。恐らくエリック・テン・ハフ監督のチームも日本人MFに対する対策を練ってくるだろうが、それまでに遠藤はもちろん、チ-ムとして準備を練ることができるだろうか。
引き続き整理されることがなければ、クリスタル・パレス戦やサン=ジロワーズ戦のように苦戦を強いられるかもしれない。
(文:安洋一郎)