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Jリーグ 12か月前

「2位は記憶に残らない」川崎フロンターレが譲らなかったもの。自分たちのスタイルを捨てて掴んだ天皇杯優勝の価値【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

苦しんだチョン・ソンリョンの2023シーズン


「速い選手が大勢いて、カウンターも鋭いので、そういう状況が起こりうる、という予測は試合前に立てていた。僕のストロングポイントは1対1で止めるプレー。なので、先に僕が転ばないように最後まで相手を見て、逆に威圧感を与えようと。あとは本当に運がよかったと思っている」

 韓国Kリーグの水原三星ブルーウィングスから加入したのが2016シーズン。以来、川崎のゴールマウスを守ってきたソンリョンも、来日8年目の今シーズンはベンチを温める試合が続いた。

 J1リーグの出場22試合は移籍後で最も少ない。なかなか上向かないチームに歩調を合わせるように、今シーズンに京都サンガF.C.から加入した上福元直人の後塵を拝した試合も続いた。

 それでもソンリョンは「一人の選手として、試合に出たい気持ちは当然ある」とこう続ける。

「試合に出ていないときに、チームのために最善を尽くす。あるいは、試合に出ている選手をサポートする。そうした状況を100%で続けていく先にチャンスが来ると信じていた。個人的なことよりもチームが大前提なので、そういう気持ちで最善を尽くした。それがプロだと僕は思っている」

 シーズンを通して切磋琢磨してきた34歳の上福元とは、試合前日にPKを蹴り合ってきた。ソンリョンが蹴るPKに上福元が対峙し、上福元のそれをソンリョンが受ける。柏との決勝戦を翌日に控えた練習でも2人の真剣勝負は変わらない。そして、ソンリョンのPKを上福元が止めた。

 実際にPKを蹴るシーンが巡ってきた柏戦で、前日の失敗が生きたとソンリョンが明かす。

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