気が利いたプレーと危機管理能力
「前線へボールを運びチームの重心が前がかりになるなか、谷口彰悟や冨安健洋らのセンターバックは常にボールを奪われたときの対応を考えながらポジショニングしていました。実際にボールを奪われてロングボールを蹴り込まれるような場面もありましたが、落下点にはすでに彼らがいてボールを回収できるように守れていました。さらに、遠藤航、守田英正、田中碧らのボランチは前線に絡み攻撃参加しつつも危機管理を忘れておらず、ポジショニングを修正しつつセカンドボールを奪いやすいようにプレーしていました」
このように勝因には“ネガティブトランジション”と“危機管理能力”を挙げ、相手に決定機を与えなかった日本の守備を絶賛した。
さらに、ファウル数をピックアップして守備面における日本の成長した点を説明した。
「日本の守備を考察するうえで、おもしろいスタッツが1つあります。シリア戦におけるファウル数は、日本が10でシリアが8でした。あれだけ日本が攻めていたにもかかわらず、日本のほうがファウルが多かったのです。
それは日本の選手らがボールロスト後に素早くファウルして、相手の攻撃を未然に防いでいることを示しています。守備の組織を整えたときには、ある程度の自信があるのだと思います。それを整える時間をファウルでプレーを止めることによってつくり出していました。ボールを失うというミスが深刻化する前に防ごうという意思がチーム全体から感じられ、奪われた本人ではなくてもファウルで止めて時間をつくろうというプレーが見られました。
ファウルで止めるのは1つの手段なのですが、総じていえばボールを奪われたシチュエーションに対して、日本の選手は全員が集中力のある対応ができており、気が利いたプレーができていました。そのことがファウル数となって表れたのだと思います」
このような戦術的なファウルは、ヨーロッパのサッカーシーンでは高く評価されることがある。そういったプレーがなぜ必要で高評価を得るのかを詳しく解説してくれた。