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プレミアリーグ 12か月前

【三笘薫・分析コラム】なぜカットインしない? 10人のチェルシーに武器を封じられた事情

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

カットインの少ない三笘薫。もっと強引になるべきだった?



 確かにチェルシー戦ではカットインからゴールを脅かすシーンはなかった。アタッカーとして様々な色を出していくことは重要であり、そういった意味で三笘は単調だったと言わざるを得ない。

 しかし、強引に仕掛けられる状況でなかったのも事実。チェルシーの守備陣は強固だった。

 三笘がボールを持つと、右SBのディサシはもちろんのこと、コール・パルマーが素早くカバーに入り、常に1対2の状況を作り出している。またチェルシーは途中より5バックに変更しており、右WBに入ったイアン・マートセンが三笘を監視し、ディサシとパルマーで前後のスペースを埋めていた。これを1人で打開するのは至難の業だ。

 このチェルシーの徹底した陣形を崩すには味方のサポートが必要だったが、この日左SBに入っていたのはジェームズ・ミルナー。彼はペルビス・エストゥピニャンほど攻撃的ではなく、とくに展開が早いとサポートに追いつけないこともある。また、トップ下のジョアン・ペドロが左サイドに流れてくることも度々あったが、中央に人がいなくなることを考えても、あまり効果的ではなかったと言える。つまり、三笘は常に複数人に囲まれている状態だった。

 また、三笘にとって厄介な存在となっていたのがモイセス・カイセドだ。南米の狩人は変に最終ラインに吸収されることなく、バイタルエリアに留まって仕事を果たした。三笘がカットインしたとしてもすぐに対応できる位置取りで、三笘が深くえぐった際にはしっかりとマイナス方向を埋めている。昨季ともにプレーした仲だからこそ、日本人選手の特徴を完璧に把握していた印象だ。

 三笘は対峙する選手だけでなく、そのカバーに入る選手の位置も確認した上で、よりボールを失うリスクが少ないスペースへドリブルをする。このスタイルを考えると、チェルシー戦ではカットインを選択しないのではなく、選択できなかったと総括することができる。

 昨季のレスター戦で決めたカットインからのスーパーミドルのような形を期待されたが、その時と今回とでは守備の陣形やピッチ内の様々な状況が違いすぎる。確かにクロスの工夫は必要だったかもしれないが、強引にカットインを仕掛けたところで果たしてそれが効果的だったかは疑問だ。

(文:小澤祐作)

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