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Jリーグ 12か月前

「お前、負けんなよ! ちゃんとしろよ!」東京ヴェルディ主将を救った後輩の一喝。歴史を背負う覚悟と涙の意味【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

森田晃樹を救った後輩の一喝

東京ヴェルディMF森田晃樹とFW染野唯月
【写真:Getty Images】



「晃樹、お前、負けんなよ! ちゃんとしろよ!」

 声の発信源をたどっていくとFW染野唯月がいた。ピッチを離れたプライベートでも仲のいい、ひとつ年下のストライカーの魂が込められた檄は、森田を我に返すのに十分な響きを伴っていた。

「初めて呼び捨てされました。ハッとしましたよね。試合の後に染野選手に聞いたら『あのときの晃樹くんは、本当に顔が死んでいたよ』と言われて。本当に助けられました」

 0-1のまま推移していった一戦は、8分が表示された後半アディショナルタイムの4分過ぎに大きく動いた。自陣の右タッチライン際で、清水のMF神谷優太を複数で取り囲んだ末に副キャプテンのDF谷口栄斗がボールを奪取。すかさず前方にいたMF中原輝へつけてカウンターを発動させる。

 中原は振り向きざまに、清水の最終ラインの背後へ浮き球のパスを供給。これがすでにスプリントを開始していた染野の足もとにピタリと落ちる。染野はそのままペナルティーエリア内の右側へドリブルで突進。慌ててカバーに走ってきたÐF高橋祐治のスライディングタックルを誘発した。

 染野がもんどりうって倒れた直後。再び池内主審の笛が鳴り響いた。PKを告げる判定に5万3000人以上の大観衆が駆けつけたスタンドが騒然と化す。VARとの交信をへても判定は変わらない。そして、この時点ですでに、自分が蹴ると言わんばかりに染野は自らボールを抱えていた。

 試合中に獲得したPKに関して、ヴェルディは事前にキッカーを決めていない。そのなかで染野は率先して意思を示した。さらに否が応でもプレッシャーが増す96分という土壇場で、ダイブした清水のGK大久保択生に右手の指先を触れられながらも、ゴール右隅へ強烈な一撃を突き刺した。

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