浦和レッズにとって嬉しい誤算
もちろん、そうした日程にばかり言い訳材料を求めるべきではない。開幕前からその時期にACLファイナルが来ることも、カップ戦を勝ち上がるほど過密日程になることも分かっていた。シーズンに入ってからちゃぶ台返しのように日程がすり替わったわけではない。その中で、戦力面は期待値ベースでありすぎたし、夏には元日本代表の中島翔哉や安部裕葵、エカニット・パンヤを獲得したが、大きな効果を発揮しなかった。
強いて言えば“ブック”ことエカニットのフィットが早く、シーズン最終盤でジョーカーとして良い働きを見せたが、24歳のタイ代表MFは来シーズンへの投資に近い。復調途上の安部にしてもそうだ。過密日程をこなす選手層に問題があると言っても、選手の頭数が足りていないわけではない。
しかし、スコルジャ監督が例えばボランチで岩尾憲と日本代表にも選ばれた伊藤敦樹を固定的に使い続けた理由は1つ1つ結果を求められる中で、その時点で信頼の置ける選手に頼ってしまう傾向につながった。そうした状況を破って、主力に食い込んでくる選手も少なかったが、そこは現場とフットボール本部の両方に責任があるだろう。そうした浦和にあって、良い意味での驚きはホセ・カンテの活躍だった。
当時32歳で加入したギニア代表FWは開幕後の3月13日に加入が発表され、徐々にコンディションを上げながらチームにフィットしていくと、4月9日の名古屋グランパス戦でデビュー。ACLファイナルでも起用されたが、リーグ戦の初ゴールは5月27日の京都サンガ戦と早くはなかった。そこから”理不尽”とも形容される脅威的なシュート力を武器に、前半戦の浦和を引っ張った興梠慎三も認めるほど、どんどん頼もしい存在になって行った。
そうしたポジティブなサプライズを持ってしても、浦和がACLファイナル後のタイトルを獲得するにはいたらなった。特にスコルジャ監督が「運命を変える」と語った、ACLのホーム浦項スティーラーズ戦からルヴァン杯の決勝を挟み、ヴィッセル神戸戦まで、10月下旬から11月中旬の5試合で、1分4敗という結果に終わったことが、シーズンを決定づけてしまった。