右サイドの攻撃を輝かせた冨安健洋の献身性
そしてサカがいる右サイドの攻撃をより輝かせたのが、冨安健洋の献身性だった。
日本代表DFはサカが内側か外側のどちらでボールを持って仕掛けたいのかというのを瞬時に判断することができていた。前者であればイングランド代表FWの外、後者であれば内のレーンを走り抜けることで、よりRCランスの守備を混乱させていた。
サカの外を抜けてボールを引き出し、深い位置まで進入してからのクロスという場面は何度かあり、11分の場面とアシストした46分の場面はボックス内にピンポイントのクロスを届けた。
どちらの場面もイングランド代表FWが相手を引きつけていたことで、余裕を持ってクロスを上げることができている。これが高精度のクロスに繋がった。逆に33分のように冨安が内側のレーンを走れば、サカのマークが緩くなる。この2人の関係性がアーセナルの右サイドを活性化させ、大量得点を演出した。
実際に前半に決まった5ゴールのうち、4ゴールが右サイドを起点としたものであり、この試合において最も脅威になっていたことは明らかだ。
冨安は後半開始のタイミングでベン・ホワイトと交代してお役御免に。これについてミケル・アルテタ監督は「彼(冨安)は本当に素晴らしかった。ただ、多くの時間をプレーしており、我々は本当に過密スケジュールをこなしている。現時点ではDFの選手が本当に不足しており、いくつかの変更を加えて休ませ、すべての選手に時間を与えなければならなかった」と明かしており、今週末以降に向けた温存だったと明かしている。
今節の勝利でアーセナルは最終節を前にグループBを首位通過することが決定した。これは12月から年明けにかけての過密日程の中ではかなり大きな意味合いを持ち、第16節アストン・ヴィラ戦と第17節ブライトン戦の間に行われるグループステージ最終節PSV戦で完全なターンオーバーを敷くことができる。
これは主力を休ませるだけでなく、RCランス戦でもベンチ入りを果たした17歳のマイルズ・ルイス・スケリーやイーサン・ヌワネリら期待の若手たちUEFAチャンピオンズリーグ(CL)に大舞台の雰囲気を味わってもらう打ってつけの機会となる。
今節の勝利はただの大勝だけでなく、アーセナルの未来にも繋がる最高の結果となった。
(文:安洋一郎)