「まるでワインのよう」紆余曲折を経て小島亨介が目指すのは…
今シーズンをこう振り返る小島は、名古屋U-18からトップチームへの昇格を見送られ、早稲田大学から2019シーズンに当時J1の大分トリニータへ加入した。しかし、YBCルヴァンカップのグループリーグ2試合に出場したけで、リーグ戦のゴールマウスに立てないままルーキーイヤーを終えた。
翌2020シーズンからはJ2を戦っていた新潟へ期限付き移籍。昨シーズンからは完全移籍に切り替えてリーグ戦で全42試合にフルタイム出場し、新潟の優勝と5年ぶりのJ1昇格への原動力になった。
J2を戦っている間に、東京五輪へつながる年代別の日本代表は縁遠い存在となった。自国開催の晴れ舞台に臨んだのは、いずれも年下の谷晃生、大迫敬介、鈴木彩艶だった。それでも遠回りしたとは思っていない。悔しさや無念さを含めて、味わってきたすべてがいま現在の小島の糧になっている。
1982年のワールドカップ・スペイン大会を制したイタリア代表の守護神、当時40歳のディノ・ゾフは「経験が熟成される、まるでワインのようなポジションだ」とゴールキーパーの特性を語る。森保ジャパンを含めて、まさに現在進行形でさまざまな経験を積み重ねている小島はこう言う。
「チャンスがあれば、そういった(代表戦の)舞台にももちろん飛びついていきたい。ただ、自分が所属しているチームでしっかり結果を出し続けることが、そういうところにつながると思っているので、あまりそこだけを意識せず、本当にいま、目の前というところへ意識を向けてやっていきたい」
来月3日の最終節は、本拠地デンカビッグスワンスタジアムにセレッソ大阪を迎える。
「振り返ればよかったシーンもあれば、まだまだだなと思わされたシーンも多かった。まだ終わっていないですけど、ひと言で表せば本当に充実した1年になっているとは感じています。ただ、もっともっと高いレベルを表現しないと上には行けない。最後は勝って、笑って終わりたいですね」
セレッソとは敵地ヨドコウ桜スタジアムでの開幕節で対戦し、先制しながら逆転される展開から、残り10分で追いついて引き分けた。J1初陣で勝ち点1を手にしてから288日。連続負けなしとクリーンシートでシーズンを締め、J1の舞台で成長してきた跡を小島が証明するにはもってこいの相手となる。
(取材・文:藤江直人)
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