久保建英がサディクに注文!? その理由は
この試合のマン・オブ・ザ・マッチ(MOM)にはCFとして先発に抜擢されたサディクが選ばれている。ゴールから離れた位置から、それもノールックで叩き込んだ強烈なミドルシュートは圧巻の一言だった。
ゴールという結果を残したサディクは、わかりやすく勢いに乗っていた。ドリブルの仕掛けが冴え、シュートも果敢に放っている。
しかし、ストライカーとしてエゴを出すこと自体は悪くないが、それが前面に出過ぎていた。勢いに乗っていることもあって全部を自分で解決しようとしており、おまけにボールばかり見ているためフリーの味方を活かせない。ゴールシーンでも何名かの選手がフリーになっていながら、サディクは強引にシュートを選択している。結果的にネットを揺らせたから良かったものの、外していれば大バッシングだった。
ソシエダは両WGと中盤に強みを持っているチームで、それゆえCFにはボールを収め彼らを活かす能力が求められている。最近ではミケル・オヤルサバルがそのタスクを高質にこなしているが、サディクはタイプ的にかけ離れている。一瞬の爆発力は光るものがあるが、彼が入ることでややソシエダ本来の強みが薄れるような印象は否めなかった。
60分には敵陣中央でボールを収めたサディクが巧みな股抜きからフェルナンドをかわすと、気を良くしたか強引にミドルシュートを選択し、ボールをゴール裏に飛ばした。この時、右の久保が開いてパスを受けようとしていたのが見えておらず、無視される格好となった久保は「空いてるよ」というようなジェスチャーでサディクの方を見ていた。
試合終了後には久保がサディク、そしてスタッフを交え何か話している姿がとらえられた。久保の表情を見るとジョークを言っているようには思えない。久保の話を聞いたスタッフは「もういいだろ」という感じで日本人選手を突き放しており、これはあくまで推測にはなってしまうが、久保はおそらくサディクにプレー面の指摘をしていたのだろう。それを聞いたスタッフは勝った試合で、それも活躍した選手に今言う必要はないと久保をサディクから離したと見ることができる。
いずれにせよ、サディクが勢いに乗りエゴに走るのは久保にとって面白いことではないし、長い目で見れば何よりチームのためにもならない。より効率よくゴールへの道筋を見つけられる久保だからこその試合後の行動だったのではないか。
(文:小澤祐作)