イニエスタの退団でキャプテンは誰に?
大迫のアシストから12分に先制点を決めていたMF井出遥也に代わる交代出場で、ファン・サポーターの拍手に出迎えられながら山口が戻ってきたのは58分。それまでゲームキャプテンを務めていた酒井高徳から腕章を託され、インサイドハーフでプレーしながら歓喜の瞬間を迎えた。
「僕の役割というか、あれ(キャプテン)に関しては高徳(酒井)が本当に完璧にこなしてくれていたと思っています。なので、僕は安心して(ピッチの外から)見ていました」
自身の欠場中にゲームキャプテンとしてチームをけん引し、主戦場の右サイドバックに加えて、本来は山口が担うボランチやインサイドハーフでプレーした酒井へ感謝した山口は、一方で意外な言葉も残している。7月から当たり前のように左腕に巻いてきたキャプテンマークに関してこう打ち明けた。
「正直に言うと、僕、キャプテンを務めていますけど、ここまで5年間はアンドレス(イニエスタ)がずっとキャプテンで、夏にいなくなって、その後にクラブ側から正式にキャプテンと言われていたわけではないので。なので、自分がキャプテンだという自覚はあまり持っていなかったんですね」
今シーズンの神戸の躍進は、ハイプレス、ハイインテンシティーに舵を切った戦い方の変化を抜きには語れない。その代償として出場機会が激減したキャプテンのアンドレス・イニエスタが、一人の選手としてより多くプレーできる状況を望み、契約を半年残していた7月に退団を選択した。
後任を誰に託すのか、という点でチーム内外の思いは一致していた。山口以外には適任者はいなかったと言っていい。だからこそ、正式に告げなくても山口に、という流れになったのだろう。神戸を引っ張る覚悟をより強くしている山口も、キャプテン指名の件は実はそれほど深刻に受け止めていない。神戸市内のホテルで行われた優勝会見でも、この件を話して同席した三木谷浩史会長を笑わせている。