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Jリーグ 1年前

「自分はどうなってもいい」横浜F・マリノスを勝たせたかった角田涼太朗の溢れる思い【コラム】

シリーズ:コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

みるみる腫れる角田涼太朗の右目



 倒れこんだ角田の右目のまぶたは、みるみるうちに腫れた。それでも、角田はプレーを続ける。64分からは左サイドバックにポジションを移し、ピッチのいたるところに顔を出して攻撃にも絡む。そして、72分のコーナーキックの場面で、角田は頭につけていたヘッドギアを相手ゴールの脇に投げ捨てた。

「正直に言うと目(の腫れ)もあって邪魔だった。それよりも何よりも勝ちたかっただけで、自分のことはどうなっても良かったし、チームが勝てれば何でもいいと思っていた」

 手術を受けた角田の下顎はまだ完治していない。それでも角田は、これから先のリスクより、今この瞬間にプレーできることを優先したのだった。

 3月にサッカー日本代表に選出されながらもメンバー発表直後に負傷で参加辞退を余儀なくされ、5月には右第五中足骨を骨折して3か月以上に渡って戦列を離れた。そして先述した下顎骨骨折で1か月の離脱。セレッソ戦で復帰を果たした後には「本当に幸せでした」と復帰できた喜びをかみしめていた。プレーできなかった時期に感じた悔しさが、プレーできる喜びを増幅させる。

 角田の言葉は、キャプテンが常に口にしてきた思いとシンクロした。小学生のときからマリノスのユニフォームを着続ける喜田拓也は、これまで何度も「このチームのためにすべてを捧げる」と言ってきた。そして、新潟戦後のセレモニーでは「ファン・サポーターの皆さんと日本一の景色を見たい。その強い決意が揺らいだことはありません」と話す。

 この試合の数時間後に、連覇の可能性が潰える可能性もある。それでも角田は「まだこの仲間と戦えるチャンスを無駄にしたくない」と溢れる思いを言葉にした。

 角田はセレッソ戦後に「今日みたいな執念というか、一つのボールをがむしゃらに追いかけることで、見ている人の心を動かすことができると思う」と言っていた。新潟戦では勝つことができなかった。それでも角田のプレーが多くの人の心を動かしたに違いない。

(取材・文:加藤健一)

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