「プロ選手として、ここだけは絶対に譲れないこと」
クラブ名称が湘南ベルマーレに変わってからは、絶対的なストライカーがなかなか現れなかった。チーム内得点王がひと桁のゴール数にとどまるシーズンが続いたなかで、昨シーズンはカタール・ワールドカップに臨む日本代表にも選出された町野修斗がリーグ2位の13ゴールをあげた。
今シーズンも9ゴールをあげていた町野は7月に、湘南の1部残留を仲間たちに託してドイツ・ブンデスリーガ2部のホルシュタイン・キールへ移籍。入れ替わるように怪我から復帰し、時間の経過とともに得点感覚をプロ仕様に磨き上げてきた大橋が、昨シーズンの町野のゴール数に並んだ。
町野が新天地を求めた湘南で、自分がやらなければ、という責任感がより強まったのか。こう問われた大橋は「うーん、そんなには思っていませんけど」と苦笑しながら、胸中に秘める思いを明かした。
「チームに貢献したいとずっと思ってきましたし、残り2試合、特に次が本当に大事なので、そこに向かって準備をしていきたい。自分としても、まだまだ、という部分があると思っているので」
湘南のクラブ公式ホームページの選手紹介欄には、個々に対して「50の質問」コーナーが設けられている。生き残っていくために勝負をかける5シーズン目へ。クラブ側から「プロ選手として、ここだけは絶対に譲れないことは」と問われた大橋は「ひたむきさ」と即答している。
念願のFWで勝負し始めた大学3年次まではサイドバックやボランチ、サイドハーフでプレー。豊富な運動量と球際での激しい攻防を求められてきた原点は、エースストライカーにふさわしい数字を残す存在になっても変わらない。だからこそ、山口監督も全幅の信頼を置いている。
「ゴールを取りながら献身的なプレーもできる、というのはチームにとってすごく大きいし、非常に助けられている。残り2試合、(ゴールを)取れるところまで取ってほしい」
大橋の4連続試合ゴールが始まる前まで、湘南は最下位に甘んじていた。一転して3勝1分けと無敗を続けてきた間に、横浜FCと入れ替わる形で17位へ浮上。25日の次節は眼下の敵となる横浜FCのホーム、ニッパツ三ツ沢球技場に乗り込み、勝てば自力で残留を決められる大一番が待つ。
指揮官の期待通りに大橋がゴールを決めれば、ベッチーニョと野口が持つ5試合連続ゴールのクラブ記録に29シーズンぶりに並ぶ。そして、ホームにFC東京を迎える12月3日の最終節でも再現されればクラブ新記録が生まれる。そのときにはきっと、6シーズン連続のJ1残留も決まっているはずだ。
(取材・文:藤江直人)
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