山口智監督の苦笑いと好調の理由
結果的に“決勝点”となった2ゴール目を、大橋は淡々とした口調で振り返った。これに対して山口監督は試合後の公式会見で思わず苦笑しながら、それでいてちょっぴり驚きを込めながら称賛した。いわく「1対1をヘディングで決める場面は、あまりないと思うんですけど」と。
「点を取る、というのは素晴らしいこと。最近の好調さもあって自分のところにセカンドボールが来たというか、日頃の行いもあってボールがいいところに来るんじゃないか、というのもありますね」
ジェフ千葉の下部組織出身の大橋は、千葉県立八千代高から中央大をへて2019年に湘南へ加入。4年次には関東大学サッカーリーグ2部の新記録となるシーズン21ゴールをマークし、中央大の2部優勝と1部復帰に貢献するなど、万能タイプの点取り屋として期待された。
しかし、J1リーグで待望の初先発を果たし、59分には先制点となるプロ初ゴールも決めた2019年4月28日のサガン鳥栖戦で右足を負傷。前十字じん帯と外側側副じん帯、大腿二頭筋の損傷と全治8カ月の大怪我を負い、残りのルーキーイヤーを治療と復帰へ向けたリハビリにあてた。
翌2020シーズンも春先に右反復性肩関節脱臼で全治5カ月、さらに夏場には左鎖骨骨折で同3カ月と二度にわたって戦線離脱。2シーズン目を無得点で終えた大橋は続く2021シーズンが4ゴール、昨シーズンが2ゴールと4年間の合計がわずか7ゴールにとどまった。
迎えた5年目の今シーズン。プロ初ゴールを決めた鳥栖のホーム、駅前不動産スタジアムに乗り込んだ2月18日の開幕戦で、大橋はJリーグの歴史にさん然と輝く1ページを刻み込んだ。