遠藤航のタックルのリスク
悪質なファウルにしないためには、相手に前を向かれる前に止めきることが重要だ。
6分の場面が最も分かりやすいだろうか。このシーンでは、遠藤がヴァンサン・シエロに突っ込み過ぎたところをターンでかわされている。
1つ目の寄せで、ノーファウルで奪い切ることができていれば最高だったが、足を引っかけるような形でのファウルもできず、結果的に後ろからユニフォームを引っ張って強引に止めざるを得ない形となってしまった。
結果的に遠藤のファウルが第3の選択肢となってしまったのは、彼のタックルの手法に理由があるだろう。
遠藤のタックルは黒人選手のようなリーチの長さを生かしたものではなく、狙ったところに向かって全速力でスプリントして、ピンポイントでボールを奪う形だ。この狙いがハマればボールを奪えるが、ハマらなければリーチがない分、その後のアドリブが効かないため、簡単に剥がされてしまう。
ブンデスリーガで対峙していた選手との違いもあるだろうが、リバプールでは上手くいかないシーンが散見される。遠藤が警告を受けない程度のファウルができないのであれば、このリスクがある以上、リバプールの[4-3-3]のアンカーで起用することは難しそうだ。
実際にトゥールーズ戦では、地上戦勝率が0%(5分の0)と、かつて”デュエル王”と呼ばれた遠藤からすると考えられないスタッツに終わっている。
先述した通り、今週末のブレントフォード戦はマク・アリスターが出場停止処分で試合に出られない。プレシーズンからアンカーでプレーしていたカーティス・ジョーンズはハムストリングで負傷離脱中、絶好調のライアン・フラーフェンベルフは膝を痛めた影響で試合に間に合わない可能性もある。
チアゴ・アルカンタラとステファン・バイチェティッチも離脱中で、軽傷のフラーフェンベルフが間に合わないとなれば、中盤の選手は現実的にドミニク・ソボスライとハーヴェイ・エリオット、遠藤の3人しかいない。そのため日本代表MFは今節のパフォーマンスが悪くても先発に抜擢される可能性がある。
しかし、週末のブレントフォード戦で、本来は前線の選手であるコーディ・ガクポを中盤起用して遠藤がスタメンから外れることになれば、いよいよ厳しい事態となる。ユルゲン・クロップ監督からの信頼度が明らかになる試合となるかもしれない。
(文:安洋一郎)