ブライトンが勝利に払った大きな代償
公式戦3試合ぶりの勝利を手にしたブライトンだが、冒頭に記した通り素直には喜べないかもしれない。この完勝に払った代償は、あまりに大きすぎた。
ブライトンはこの試合で、左SBで先発したジェームズ・ミルナーが10分も経たないうちに負傷交代。さらに最終ラインの要であるルイス・ダンクも前半のうちに股関節のあたりを痛め、ハーフタイムでベンチに退いている。悲劇はこれで終わらず、65分からピッチに立った負傷明けのペルビス・エストゥピニャンが再び足を痛め、77分にリタイア。試合中にパスカル・グロスが2度も左SBの代役を務めるという異常事態が起こっている。
上記した3名の離脱期間がどれほどになるか定かではないが、これでブライトンが抱える負傷者はソリー・マーチ、ダニー・ウェルベック、フリオ・エンシソ、ヤクブ・モダー、タリク・ランプティ、ダンク、エストゥピニャン、ミルナーとなっている。そのほとんどが主力級という事実が痛いところであり、とくに左SBの人材不足に関しては深刻な問題だ。
これほど主力に離脱者が出てしまうと、デ・ゼルビ監督の志向するサッカーをピッチ上で表現することは非常に難しくなる。実際、今回のアヤックス戦でも勝利したとはいえ、ブライトンらしいビルドアップは見受けられず、相手の自滅と個のクオリティーで解決できていた印象は否めない。
いわゆる擬似カウンターが出来なくなると、ブライトンの攻撃は中途半端で、ほぼ全ての局面において個に頼った戦い方しかできなくなる。そうなると、圧倒的な個のクオリティーを持った三笘はますます外せなくなるだろう。三笘が壊れるのが先か、負傷者が回復するのが先か…。三笘はブライトンの命綱といったところだ。
三笘は怪我をしないが、ルカ・モドリッチのように毎試合ハイパフォーマンスを約束できる“鉄人”ではない。プレースタイル的にも激しいフィジカルコンタクトは避けられず、このままが続くといずれか壊れてしまうだろう。ワールドカップ・アジア2次予選を控える日本代表もドリブラーの使い方には慎重になってほしい。
(文:小澤祐作)