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なぜ冨安健洋は前半で下げられたのか? アーセナルの制度設計と助教授のタスク【CL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

冨安健洋が下げられた理由



 前提として、冨安のパフォーマンスが交代に値するものではなかったのは間違いないだろう。ただ、代わりに入ったオレクサンドル・ジンチェンコの方が、ボール保持の局面での崩しのアイデアを持っていることは事実。前半は70%前後のボール保持率を記録していたこともあり、押し込んだ展開で追加点を奪うことを考えたときに、ジンチェンコが適任であると考えるのは自然なことだ。

 ただ、もう1つの理由の方がはるかに大きいだろう。英メディア『The Standard』によると、試合後にミケル・アルテタ監督は冨安について、「前半に少しばかり違和感があった。かなりの時間でプレーしていたから、我々はリスクを取りたくなかった」と交代の理由を述べている。

 アルテタ監督が慎重になるのも無理はない。先月にトーマス・パーティとガブリエウ・ジェズスが、今月に入ってからマルティン・ウーデゴールが戦線離脱し、直近のニューカッスル戦ではエディ・エンケティアが負傷してセビージャ戦を欠場している。この試合では23人の登録枠を2つ空け、GKを2人登録している。

 これ以上離脱者を出さないためにも、リスクは最小限にとどめておきたかったはずだ。今のアーセナルにおいては、4つのポジションを主力と遜色なくこなせる点において、冨安は主力と同じくらい重要な存在だ。フル出場した4日のニューカッスル戦から中3日で、次のバーンリー戦までは中2日。その後にはアーセナルの選手たちがほとんど経験したことのない過酷なアジア遠征が待ち受けている。

 第4節を終えて最下位に沈んだセビージャのパフォーマンスが芳しくなかったことを考慮しても、冨安がアーセナルの最終ラインに必要であることを証明するのに、45分もあれば十分だった。5日に25歳となったばかりの冨安のプレーを堪能する時間は、プレミアリーグでも、日本代表でも、まだたくさん残されている。

(文:加藤健一)

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