指揮官と背番号6の以心伝心
水戸時代から右肩上がりに転じさせた自身のキャリアをこう振り返った前へ、こんな質問も飛んだ。ともに歩んできた長谷部監督の申し子的な存在ですね、と。前は思わず苦笑している。
「周りからはよくそう言われますし、見られ方もそうだと思いますけど、僕自身はどの監督のもとでプレーするにしても、求められるプレーをやるのが選手だと思っている。なので、監督に求められるようにこれからもやっていきたい。ただ(シゲさんのもとで)J2から昇格したシーズンもそうですし、J1でも多くの試合に出させてもらった。そういう経験があったからこそ、こういう大舞台でもそこまで緊張せずにいつも通り入れたと思いますし、経験というものがシゲさんと一緒にやってきたなかで一番得たものだと思っています。今日はそれを思い切り出すことができて本当によかったです」
長谷部監督は前をどのような選手として位置づけているのか。公式会見では前の存在が問われた。
「非常にいい選手ですし、私が考えていることをほぼすべてわかってくれています。戦術的な部分だけでなく、私がどのように感じているのか、というところも多分わかっていると思います。なので、そういうところを選手に、年上だろうが年下だろうが、試合に出ている選手、出ていない選手、またスタッフへアドバイスないしは間に入ってくれて、非常にいい影響をチームに与えてくれています」
水戸時代からチーム作りの指針は一貫している。黄金期のヴェルディ時代に得た薫陶はいまも忘れていない。しかし、クラブの予算的にもビッグネームと呼ばれる選手はなかなか獲得できない。福岡では4年をかけて、質実剛健という言葉がぴったりと合うハードワーク軍団を作り上げた。指揮官が続ける。