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Jリーグ 1年前

挫折と信頼。アビスパ福岡で異彩を放つ紺野和也。転機となった「本当にいい移籍」【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

紺野和也の転機

浦和レッズ戦で2アシストを記録したアビスパ福岡MF紺野和也
【写真:Getty Images】



 さらに、前半終了間際の2点目も背番号8がお膳立てする形になった。左CKのこぼれ球を右サイドにいた前が拾い、中へ入れたボールがDFにクリアされ、左の大外にいた紺野に渡った。ゴール前は混戦になっていたが、彼はマークについていた岩尾憲の股を抜いて速いクロスを入れることを選択。次の瞬間、宮大樹が酒井と髙橋利樹の間に侵入して左足を振り抜いたのだ。

「左サイドだったんで、縦に行ってGKとディフェンスの間に速いボールを上げるか、股抜きでクロスを入れるかを直前に迷ったんですけど、股抜きした方が通りそうだなと思ったんで、それを選びました」と本人は言う。この2つのアシストにはメンタル的な余裕が感じられた。

 酒井が「どちらも読みが外れてしまった」と悔やんだが、完全に浦和の裏をかくプレーで前半から2点をリードした福岡。チーム全体が高度な意思統一を見せる中、違いを作ったのは、やはり紺野だったと言っていい。

 紺野は法政大学から2020年にFC東京に加入した。切れ味鋭いドリブルが売りのMFとして期待されたが、1年目はリーグ戦9試合0得点。2年目の2021年は3試合1得点と出番を得られず苦しんだ。3年目の昨季は30試合出場2得点と数字を伸ばしたものの、途中出場が大半を占めた。

 2021年1月4日にFC東京が柏レイソルを下してルヴァンカップ制覇を果たした時も、ベンチの紺野は出番なしに終わっている。そんな悔しさを糧に今季は福岡への移籍を決断。長谷部監督から大きな信頼を寄せられ、開幕からスタメンに定着。9月には月間MVPにも選出されるほど存在感を一気に高めた。

「FC東京時代は試合に出られない悔しさはずっとありましたし、『出たら全然できるのに』と思いながらもチャンスが巡ってこなかった。でも長谷部監督は本当に信頼して使ってくれますし、その信頼は話しても分かります。やっぱり信頼されていると自信と責任を持ってプレーできる。僕にとっては本当にいい移籍でしたね」と本人は前向きに話した。

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