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お騒がせGKの知られざる素顔。エミリアーノ・マルティネス、アルゼンチン代表GKの“愛”に溢れた生き方【コラム】

シリーズ:コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

自分が経験したことを伝える「チームメイトへの愛」

【写真:Getty Images】


 17歳で渡英したマルティネスにとって、言語も気候も異なる慣れない地に適応することは簡単なことではなかった。そんな若き青年の環境の適応を助けたのが、“英語”だった。

 当時アーセナルの監督を務めていたアーセン・ヴェンゲルは言語を習得することが重要だと考え、マルティネスとの契約に「ケンブリッジ大学のテストに合格すれば2万ポンドのボーナス(約367万円)が出る」という契約を入れた。これを目標にマルティネスは猛勉強を重ね、わずか1年で試験に合格してみせた。

 マルティネスはキャリアを通じて、ローン移籍を含めると8つのクラブに移籍をするなど、新たな環境への適応の難しさを誰よりも理解している。彼は自らが経験したことを還元するべく、必ず新加入選手へのサポートを行っている。

 アーセナル時代には自身と同じく、10代で言語を離せない状況で渡英したガブリエウ・マルティネッリを家族ぐるみで支えた。彼がチームに加入して間もない頃は、マルティネスが自らの車で自宅と練習場の送り迎えを行い、一緒に年を越したこともあったそうだ。

 現在所属するアストン・ヴィラでも手厚く新加入選手を歓迎している。21年夏に同じアルゼンチン人選手のエミリアーノ・ブエンディアが加入すると、もとから所属をしていたドウグラス・ルイスとともに南米系のコミュニティを作って彼をサポート。22年冬に加入したフィリペ・コウチーニョ(現在はアル・ドゥハイルへローン移籍)、22年夏に加入したジエゴ・カルロスも仲間に入れて、毎週のように家族ぐるみで同じ時間を過ごし、適応の手助けをした。

 23年冬にアレックス・モレノが加入した際には、彼がチーム唯一のスペイン人だったこともあり、同じ言語を母国語とする自らのコミュニティに勧誘。23年夏に加入したパウ・トーレスも同じように誘い、彼らの家族にとって初めてとなる異国での生活を全面的にサポートしている。

 『ヤシン・トロフィー』の授賞式が行われた翌日の10月31日にも彼らは集まり、妻や子どもを含めた家族勢ぞろいで盛大なハロウィーン・パーティーを行った。

 親しくしているのは南米やスペイン系の選手だけにとどまらない。アストン・ヴィラのトレーニング施設の隣にはバーベキューができる場所があり、そこで定期的にチームで集まって親睦を深めている。ワールドカップ後の騒動でフランス人選手との関係も心配されたが、アストン・ヴィラ内での確執は全くない。先日には現役のフランス代表であるブバカル・カマラが、マルティネスのユニフォームを着させた息子と本人とのツーショット写真をインスタグラムのストーリーに投稿するなど、良好な関係を築いている。

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