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響いた声。湘南ベルマーレは緊急事態をどう乗り越えたのか。監督の覚悟と主将の心中【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

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明治安田生命J1リーグ第31節、湘南ベルマーレ対ヴィッセル神戸が28日に行われ、1-1の引き分けに終わった。湘南はGK富居大樹が負傷してプレー続行不可能になったが、キャプテンを務めるDF大岩一貴を急遽GKに据えてこの非常事態を乗り切った。絶体絶命のピンチを湘南はいかにして乗り越えたのだろうか。(取材・文:藤江直人)


鳴り響いたキャプテンの声

急遽GKを務めた湘南ベルマーレDF大岩一貴
【写真:Getty Images】

 湘南ベルマーレのゴール前は“カオス”になりかけていた。

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 セカンドボールを拾ったヴィッセル神戸の左サイドバック、本多勇喜が意図的に宙を高く舞うクロスを上げてくる。2人で合計30ゴールをマークしている神戸の元日本代表FWコンビ、大迫勇也と武藤嘉紀が落下点を見極めながら猛然と走り込んでくる。湘南の両センターバック、キム・ミンテと大野和成だけでなく、ボランチの田中聡も2人をマークしながら必死に戻ってくる。

 時計の針は98分を回ろうとしていた。スコアは1-1。神戸が勝ち越しゴールを奪うのか。それとも湘南が死守するのか。レモンガススタジアム平塚のスタンドを埋めた、1万1569人のファン・サポーターの視線が釘付けになったとき、ピッチ上には大きな声が響いていた。「オーケー!」と。

 声の主は主戦場のセンターバックから、直前の95分にゴールキーパーにポジションを変えていた大岩一貫だった。ジャンプしながら、必死に伸ばした両腕でクロスをしっかりとキャッチ。次の瞬間、この試合でもっとも大きい声援と拍手が、ゴールを死守したキャプテンの耳にはっきりと届いた。

 絶対にこぼしてなるものかと、着地した直後にボールを胸で抱えた大岩がちょっぴりはにかみながら、急造ゴールキーパーとして躍動した唯一にして最大の見せ場を振り返った。

「あまり覚えていないんですけど難しかった。フィールドプレイヤーをやっていても、前に出てきてくれるキーパーは助かるので、出られるところは出たいと思っていました。とにかく、絶対にボールだけは落とさないように、確実に、と思っていました。一本だけでしたけど、本当によかったです」

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