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“ハーフスペース”三笘薫が試合を変えた。ブライトンが突いたアヤックスの綻び【EL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

三笘薫のアクションがアヤックスを地獄へ



 アヤックスは戦前の予想通りステフェン・ベルフワイン、ブライアン・ブロビー、カルロス・ボルジェスの3人を前線に並べた4-3-3を採用してきたが、守備時は中盤のステフェン・ベルフハイスを前に押し出したオーソドックスな4-4-2でセット。最終ラインと中盤をコンパクトにすることで、中央をがっちりと絞めた。へドヴィヘス・マドゥロ暫定監督の“まずは守備から”というメッセージは明確だった。

『UEFA.com』によると、試合後にロベルト・デ・ゼルビ監督はアヤックスがこのような戦い方をしてくるとは「予想していなかった」とコメント。続けて「だから、我々はスペースを理解するのに多くの時間を費やすことになった」と明かしている。

 イタリア人指揮官の言葉通り、ブライトンは立ち上がりから効果的なスペースを見出すのに苦労していた。そのため、なかなかチャンスらしいチャンスを作れず、ボールは持っているが、どちらかと言うと“持たされている”という印象の方が強かった。

 しかし、前半途中からブライトンの両サイド、三笘薫とシモン・アディングラが立ち上がりよりも内側でプレーする機会を増やすように。また、ジョアン・ペドロとアンス・ファティは横並びの2トップという形だけでなく、縦関係も築くなどポジションを頻繁に入れ替え、相手の目線を動かした。つまり、サイドではなく、よりリスクを冒して“中央で”裏抜けなどのアクションを増やした結果、少しずつではあるがアヤックスDF陣に綻びが出てくるようになった。

 36分には、右ハーフスペースでボールを持った三笘がプルアウェイの動きでDFのマークを外したJ・ペドロにスルーパスを出し、決定機を作り出している。2人の息が完璧にあった瞬間だった。

 そして42分、ブライトンのアヤックス攻略が実を結ぶ。やはりハーフスペースでルイス・ダンクからのパスを受けた三笘がそのままボックス内に侵入し、強烈なシュート。これはGKに弾かれたが、こぼれ球にJ・ペドロが反応し、冷静に押し込んだ。

 高い位置でダンクがボールを持った際、A・ファティがボールを引き出しに下がるアクションを起こしたことで、相手MFベンジャミン・タヒロビッチがそこに釣られた。そしてアヤックス右SBのアントン・ガーエイは大外に開いていたジェームズ・ミルナーを気にしてやや外寄りのポジショニングを取っていたため、本来タヒロビッチがカバーするはずだったSBとCBの間にギャップが生まれている。そこにうまくポジショニングした三笘がパスを引き出したことで、貴重な先制ゴールにつながったのだ。

 このゴールが誕生するまでの数分間、ブライトンは数えきれないほどのパスを回している。動き出しとやり直しを繰り返すことでジワジワとアヤックスDF陣を揺さぶり、一瞬の綻びから結果につなげてしまう様は、デ・ゼルビサッカーらしさ全開だったと言えるだろう。

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