ゴールもアシストもない久保建英はなぜMOMに?
【写真:Getty Images】
マジョルカ戦でベンチスタートだった久保は、戦前の予想通り右ウィングで先発した。カルロス・フェルナンデスと交代する76分までプレーし、マン・オブ・ザ・マッチ(MOM)に輝いている。
先述の通り、ベンフィカは中途半端な攻撃に終始しており、守備陣形がバラバラなままソシエダの攻撃を迎えることも多かった。そのため、久保は最大級の警戒を受けて複数人で徹底マークされる国内リーグ戦とは違い、相手左サイドバックと1対1で勝負できる機会が多々あった。
久保と対峙したダビド・ユラーセクはかなり足を出して飛び込んでくるタイプであり、相手の出方を見極めてボールをいなせる日本人レフティーからするとかなりやりやすい選手だったと言える。実際、久保は何度もユラーセクをドリブルでかわしている。そこからの左CBオタメンディのカバーはさすがと言うべきか早かったが、CBを釣り出し、味方にスペースを与えるという意味で久保が果たした仕事は大きかった。
また、久保はこの日CL初ゴールを強く意識してか、いつも以上にシュートを多く放った。味方にパスを出せる状態でも、やや強引な形でフィニッシュに持ち込んでいる。
しかし、初ゴールを意識しすぎたか、ややボールに力が入りすぎており、精度という部分に物足りなさを残している。67分にはユラーセクとの交代で入ったフアン・ベルナトをカットインで剥がし、ファーサイドへコントロールショットを放ったが、惜しくもクロスバー直撃。今の久保ならば確実に決めなければならないシーンだったが、やはり普段とは何か違ったのだろうか。
結局、久保はゴールやアシストという目に見える結果を残すことはできなかった。それでもMOMに選出されたのは、それだけベンフィカDF陣にとって脅威だったということだろう。シュート数5本、ドリブル成功数7回はいずれも両チーム最多のスタッツである(スタッツはデータサイト『Who Scored』を参照)。
久保をMOMに選出したUEFAのテクニカル・オブザーバー委員会は「彼は優れた技術、敏捷性、動き、コントロール、ペースを見せた。試合を通してベンフィカの脅威となり、ボールを受けるたびにDFを翻弄した。クロスバーを直撃したシュートは不運だった」と理由を説明している。確かにゴールを決めたB・メンデスらよりボールを持った際のインパクトはあった。
次こそはCL初ゴールを。世界最高峰の舞台における久保の挑戦はまだまだ続く。
(文:小澤祐作)