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「賭けに勝った」町田ゼルビアが乗り越えた3つの節目。「出過ぎた杭」が貫いた姿勢とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

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明治安田生命J2リーグ第39節、ロアッソ熊本対FC町田ゼルビアが22日に行われ、0-3で勝利した町田がクラブ史上初のJ1昇格を決めた。黒田剛監督の下で戦った1年には、いくつかのターニングポイントがあったという。町田は苦しい局面をどのように乗り切り、悲願のJ1昇格をつかみ取ったのだろうか。(取材・文:藤江直人)


異例のプロ転身。黒田剛監督が挑んだ1年

FC町田ゼルビアを率いる黒田剛監督
【写真:Getty Images】

 ちょうど1年前の2022年10月24日。J2のFC町田ゼルビアが発表した監督人事が、日本サッカー界に大きな驚きをもたらした。リリースに「黒田剛監督就任のお知らせ」と綴られていたからだ。

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 1995年から監督を務める青森山田を高校サッカー界屈指の強豪校へ育て上げ、3度の全国高校サッカー選手権優勝を含めて、7度の全国制覇へと導いた名将はこのとき52歳。監督退任だけでなく、主幹教諭も務めていた同校をも退職し、プロの世界へ挑む決断は異例の転身と受け止められた。

 何しろ高校サッカー界から、ダイレクトにJクラブの監督に就任するケースは初めてだった。前方に誰の背中も見えない挑戦へ、黒田監督はリリースのなかでこんな言葉を綴っていた。

「私はこれまでプロの指導者としての経験がなく、私の就任について不安を感じられることもあるかもしれません。ただ、長きに渡り培ってきた『勝者のメンタリティー』はどのカテゴリーであっても、失われるものではないと信じております」(原文ママ)

 迎えた2023年10月22日。1年前に表明された決意が、ほぼ完璧な形で具現化された。

 敵地・えがお健康スタジアムへ乗り込んだ、明治安田生命J2リーグ第39節でロアッソ熊本を3-0で撃破。勝ち点を78に伸ばした町田は、同68で並ぶ3位のジュビロ磐田と4位の東京ヴェルディとの差を10ポイントに広げて、3試合を残してJ1へ自動昇格できる2位以内を確定させた。

 歓喜の余韻が残るなかで臨んだ公式会見。目を潤ませながらフラッシュインタビューに応じていた黒田監督は、無意識のうちに涙腺が緩んだ理由を、脳裏に次々と蘇ってくる記憶に帰結させた。

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