「少し悔しさが残る」デビュー戦の反省
実は後半アディショナルタイムに入った時点で、チュニジアが放ったシュートは0本だった。
「ボールに触らない、ということはチームにとってはいいことなので、そこは守備陣に感謝したいと思います。自分としては、その上で裏のスペースへのケアというところは常に意識していました」
彩艶がこう振り返ったように、相手のシュートを触ったシーンは最後まで訪れなかった。しかし、最後の最後に肝を冷やした。終了直前の94分。右サイドからMFハムザ・ラフィアーが放ったクロスに、冨安と町田浩樹にはさまれながらもジュイニが空中で競り勝ち、頭をヒットさせたシーンだ。
完璧なシュートはしかし、ゴールポストを直撃した。身長191cm体重90kgの巨躯を目いっぱい伸ばし、必死にダイブするも届かなかった彩艶は、シュートを打たれる前の段階に反省の言葉を寄せた。
「あのクロスは自分が出られたんじゃないかな、というのが感覚的にはありました」
右利きのライファーがインスイングで放ったクロスは、鋭い弧を描きながら日本ゴールに迫ってきた。ただ、菅原由勢にマークされていたライファーは日本のゴールに背を向けた体勢で、振り向きざまに、まさに乾坤一擲とばかりに右足を一閃。予想しづらかったプレーゆえに、彩艶の反応も遅れていた。
結果としてチュニジアをシャットアウトした彩艶は、それでも試合後に細部にこだわり続けた。
「今日のゲームを振り返ると、正直、自分としては少し悔しさが残る展開になりました。最後の部分でチームにばたつきを与えてしまったところに関しては、日本代表のゴールキーパーとしてもっと、もっと落ち着きを与えなければいけないと思っています。ゴールキーパーは安定感だと思っているので、その安定感をいかに出していけるか。さらに自分の武器であるクロスに対するアタックなどを含めて、守備陣に対して『このキーパーがいるから大丈夫だ』と思わせる部分がすごく大事なので」
来月の国際Aマッチデー期間から次回ワールドカップ出場をかけたアジア2次予選が始まり、その間の来年1月には4年に一度のアジアカップが中東カタールで開催される。2025年9月まで国際親善試合が組めないタイミングで、森保一監督はA代表のゴールキーパー陣を再編成した。
ドイツ、トルコ両代表に連勝した9月シリーズから引き続き招集されたのは、ドイツ戦で先発した大迫敬介だけ。先発したトルコ戦で負傷退場した中村航輔、中村に代わって途中出場したシュミット・ダニエルはともに選外になった。
代わって今シリーズで招集されたのは、J1リーグで首位を走るヴィッセル神戸の前川黛也と、今夏に浦和レッズからシントトロイデンへ期限付き移籍した彩艶。活動開始後に前川が負傷離脱し、代わりに小島亨介が追加招集。くしくも全員が東京五輪世代という顔ぶれになった。