挑戦できる楽しさと“先輩”長友佑都への思い
「それほどプレーしていないポジションですし、ボランチへのこだわりも強く持っていますけど、世界的に見てもサイドバックとボランチを両立できる選手は増えてきている。サッカーの流行じゃないですけど、サッカーの進化という部分に対して挑戦できる部分で楽しさを感じています」
いまは違う。遠藤を筆頭に冨安健洋や三笘薫、伊東らに続いて、一番手と言える選手たちを待つポジションと言える左サイドバックを、自分の手で手繰り寄せようという気概に満ちて代表に帰ってきた。
中山の心境の変化を導いたのは、第一次森保ジャパンの終盤でポジションを争った大ベテラン、長友佑都の存在がある。自身が不在だったカタールW杯で、ピッチの内外で群を抜く存在感を放ち、第二次森保ジャパンでは選外が続く先駆者から、バトンを引き継ぐ責任や覚悟を問われたときだった。
中山は「ないと言ったら問題ですよね」と屈託なく笑いながら、胸中に秘める思いを明かした。
「選手としての特徴が違うので、僕自身も学ぶものが多かったですし、一緒にやれて盗める部分も多かった。間違いなくそこの部分で責任が生まれるのは事実ですけど、僕としては意識がもうひとつ上にあって、佑都くんにないものだけでなく、佑都くんが持っていたものも兼ね備えよう、というところがある。この質問に答えるのは難しいけど、佑都くんが呼ばれなくなった左サイドバックというポジションに、確実に安心感を与えられるような選手になることが、僕にとっては怪我から帰ってきたなかで抱くひとつの野望でもある。そこはプレーとともに、みなさんに感じてもらえればと思います」
長友になかった武器として、ビルドアップに関われる正確な左足のキックがある。そこへインテンシティーの高さを含めたフィジカルの強さを加え、さらに開始7分に見せた、全盛期の長友をほうふつとさせる積極果敢なオーバーラップも融合させる。これが“新しい”中山雄太を目指す野望の全貌だ。