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Jリーグ 1年前

なぜ清水エスパルスは守り抜けたのか? ジュビロ磐田を完封「こだわり続けた結果」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「こだわり続けた」清水エスパルス

清水エスパルスを率いる秋葉忠宏監督
【写真:Getty Images】



「今日はみんなが勝ちたい、という気持ちを押し出し続けたからこそ、最後、誰かしらにボールが当たって前にこぼれるシーンが続いたと思う。そういうプレーは、これじゃちょっと足りないからもう一歩、いや、それでもあれだからもう半歩とみんながこだわり続けた結果だと思う。ここ何試合かは正直、そういった部分が少し薄れていたと思う。だからこそ、今日の試合で『これがスタンダードだ』という部分を出せたのは、残り4試合へ向けてチームにとってすごくプラスになると思う」

 大ピンチを防いだ象徴的な場面が74分だった。上原が放った右コーナーキック。果敢に飛び出した権田のパンチングが甘く、ボールがほぼ真上に上がってしまう。権田の近くにポジションを取っていた後藤が、競り合い後にすかさず体勢を立て直してヘディングシュートを放った。

 しかし、無人となったゴールのカバーに入っていたDF原輝綺がひざのあたりでブロック。こぼれ球に詰めてきたグラッサのシュートも、原が今度は体を張ってブロックしてゴールを割らせなかった。

 実は権田も体に痛みを抱えていた。32分に磐田が放った右コーナーキック。パンチングに飛び出した際に磐田のFWジャーメイン良と、着地した際には味方のDF鈴木義宜と立て続けに接触した。

 ピッチ上で応急処置を受けた権田はプレーを続行した。しかし、乾が先制ゴールを決めて、チーム全員で喜びを分かち合った際には再びひざまずき、ドクターが治療に駆けつけている。秋葉忠宏監督は「普通のゴールキーパーであれば、交代を願い出でていたかもしれない」と試合後に明かしている。

「ハーフタイムに話したときも、以前に途中交代した後に失点を喫した試合の例をあげながら『絶対にゴールマウスは譲りません』と話していました。もちろん選手の体を守るのも僕の仕事ですし、ドクターと話し合ったなかで、大丈夫という判断を下しました。試合後もドクターのチェックを受けていますけれども、あの状態で最後までゴールマウスを守ってみせたのは、本当にタフな精神力とメンタリティー、そして強い責任感を持つ日本を代表するゴールキーパーだと思っています」

 ドクターによるチェックを受けていたからか。勝利した後にファン・サポーターと喜びを分かち合う儀式「勝ちロコ」にも権田は参加できなかった。最後まで清水のゴールマウスを守り、本人にはそうした思いはなかったにせよ、セットプレーの波状攻撃を受けていた渦中で、結果として絶妙“間”を作り出した34歳の権田が放つ存在感を、ひとつ年下の吉田はこう語る。

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