「余裕を求める方が逆にリスキーになる」
「みんなが集中して守れていたんじゃないかなと思いますし、全員が体を張る姿勢というのはチームが勝つためには必要なことなので。それができたから抑えられたのかなと思います」
屋外の正面玄関前に設けられた取材エリア。試合後も清水のサポーターが奏でるサンバが響くなかで姿を現した権田は、体を張って守り続けたチームメイトたちを完封勝利の要因としてあげた。
その上で吉田が言及した、セットプレーが連続したピンチでチームメイトたちを冷静にさせた絶妙な“間”についても聞いた。権田によれば、決して咄嗟の機転を利かせたものではなかったという。
「まあファウルですからね。シンプルに。チアゴがヘディングした後に、相手の選手が(チアゴの)頭にヘディングしたのだったら、それはファウルじゃないですか、という話は(主審に)しました」
映像を見直せば、サンタナの後方から後藤の頭がぶつかっている。しかし、後藤にファウルはなく、サンタナの応急処置を終えた後に、当初の判定通り磐田のコーナーキックで試合は再開された。
磐田の総得点63はリーグ3位タイで、そのうち約40%をセットプレーによるゴールが占めていた。言うまでもなく、このパーセンテージはリーグトップ。しかも、とっておきのキッカーである遠藤も投入されていた。権田は「いっぱい、いっぱいじゃないですか」と余裕はなかったと明かした。
もっとも、ヒリヒリするような攻防の連続が、清水にとって逆に奏功したと権田は続けた。
「余裕を持って守る、というのは確かにいいことかもしれない。ですけど、お互いに勝ち点3がほしい上位対決で、さらに向こうにとっては最低、引き分けでもいいという1点差ゲームになれば、もう余裕を持つというレベルじゃなくなりますよね。このレベルになれば余裕を求める方が逆にリスキーになるというか、サッカーというと綺麗にプレーすることや、あるいはシステム論をみなさんは大事にされるかもしれないですけど、本当に最後は魂というか、絶対にやられないと思って体を一歩投げ出すことが大事になる。そして、一歩投げ出せるかどうかは、やはり気持ちの部分にかかってくるので」
磐田戦を迎えるまで、清水はホームでヴァンフォーレ甲府と0-0で引き分け、藤枝MYFCのホームに乗り込んだ前節では0-2で零封負けを喫していた。勝負どころで喫した急ブレーキ。責任の一端を背負うように、41分に決勝点を決めたトップ下の乾貴士は自戒の念を込めてこう語っている。