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Jリーグ 1年前

「父の推しが日の丸を背負う日まで」“推し”の移籍。ヴァンフォーレ甲府サポーターの葛藤と本音

text by 須羽リセル photo by Getty Images

「絶対に許さん」父の本音

ヴァンフォーレ甲府時代の須貝英大
【写真:Getty Images】



 その日の甲府は0-2で金沢に完敗。

 帰りの車の中で、父は強い口調でこう言った。

「早く勝ってくれ。『須貝がいないから負けた』なんてこんは、絶対に許さん」

 今までどんな主力選手が移籍しても、父がそんなことを言ったことは一度もなかった。父の須貝選手への思い入れの強さを感じ、私は車の中で拳を突き上げた。

「今年絶対昇格して、来年の鹿島戦で思いっきりブーイングしてやらないと気が済まないよね!」

「おう!そうだそうだ!」

 土砂降りの環状線で、父はアクセルを踏んだ。

 翌日。洗濯を終えた須貝選手の名前入りタオルマフラーを父に渡した。ホーム金沢戦でも父は須貝選手のタオルマフラーをショルダーバッグの中に入れていたらしい。

「もう、これ要らんな」

 父が物憂げな表情を見せて私に返そうとするので、私はタオルマフラーを父に押し付けた。

「須貝くんが日本代表になったら掲げるためにとっておきなよ」

 父は何も言わずにタオルマフラーを受け取る。

 そして自分のクローゼットに大事そうにしまった。

 いつかそのタオルマフラーが日の目を見る時まで。

「またな」

【須羽リセルさんの投稿はこちら】※noteに遷移します

【了】

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