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Jリーグ 1年前

「父の推しが日の丸を背負う日まで」“推し”の移籍。ヴァンフォーレ甲府サポーターの葛藤と本音

text by 須羽リセル photo by Getty Images

父は吐き捨てるように言った



 Web報道が出た時も、地元紙の山梨日日新聞の報道が出た時も、父は何も言わなかった。私が父を相手にどんなに嘆いても喚いても、父は無言を貫いていた。しかし公式リリースが出た数時間後、父は吐き捨てるように言ったのだ。

「ユニフォームぶん投げてぇわ」

と。

 地元出身。

 幼い頃は自身も甲府サポーター。

 そして今は甲府のキャプテン。

 父も日に日にたくましく頼もしい「甲府の漢」になっていく須貝選手の成長を楽しみにしているようだった。それだけにシーズン途中の移籍は受け入れられなかったらしい。

 もちろん須貝選手やご家族の人生を考えれば、年俸の高いクラブに行くのは自然だということは、父も重々承知している。ただサポーターとして、割り切れない気持ちがあることもまた事実なのだ。

 8月6日のホーム金沢戦。

 その日はJ1の中断期間が終わった鹿島の試合もあり、サポーターの間で「須貝くんが加入後即スタメン」という話題が上がっていた。

 私はスタジアムの観客席で父に「須貝くん、鹿島でもうスタメンだよ」と伝えた。父は「本当か!?」と驚いた様子だったので、私がスマートフォンで鹿島のスタメン表を見せる。鹿島の名だたる選手達と共に「須貝英大」が名を連ねている。

 それを見た父は「まあ、どっちでもいいわ」と小瀬のピッチに視線を移した。その目はなんとも寂しげで、私は何も言わずにスマートフォンの画面を消した。

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