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停滞と決壊。なぜアーセナルは負けたのか? 痛手だった修正力のなさ【欧州CL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

試合終了まで修正できなかったポイント



 もう一つ、アルテタ監督が修正できなかったのがサイドからの攻撃だ。

 左WGのレギュラー格であるガブリエウ・マルティネッリが負傷離脱中のアーセナルにとって痛恨だったのが、34分のブカヨ・サカの負傷交代である。これでベストメンバー時と比べると、サイド攻撃の火力をかなり欠く状態となった。

 サカの代わりに投入されたファビオ・ヴィエイラはキャラクター的にもWGではなく、個人での縦突破が選択肢にないため、相手からすると中への攻撃を守ればいいという対策しやすい状況に。一方の左WGに対しては右CBのジョナサン・グラディットと右WBのフランコフスキの2枚で対応しているため、個人での打開が難しく、消される結果となった。

 アーセナルの場合は左SBがボランチの位置でビルドアップをサポートするため、左WGが孤立する傾向にある。マルティネッリは単騎でも突破できたかもしれないが、先発したレアンドロ・トロサールと途中出場のリース・ネルソンは大苦戦。仮に大外からのサポートなど、近場での連係があればこの状況を打開できる可能性もあったが、これが改善されることはなかった。

 アルテタ監督からすればこの事態を修正するチャンスはあった。それが70分のカイ・ハフェルツに代わって出場したエミール・スミス=ロウ投入のタイミングである。左WGのネルソンと同時にピッチに入っているため、彼ら2人にサイドからの攻略法を十分に伝えられてはずだが、アーセナルの10番に与えられた役割はあくまでも中央での攻撃参加であり、左サイドからの攻撃の停滞は解決せず。そのまま試合終了を迎えた。

 アーセナルはアルテタ監督の後手に踏む采配と修正力のなさもあって敵地で勝ち点を失う結果に。加えて先週末のボーンマス戦と比べるとスタメンで温存できたのはエディ・エンケティアとベン・ホワイトの2選手のみで、主力のターンオーバーができないまま、エースのサカも怪我をするという計算外の事態で週末のマンチェスター・シティとの大一番に臨むこととなった。

(文:安洋一郎)

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